はじめに
アルケンと次亜ハロゲン酸からハロヒドリンと呼ばれる1,2-ハロアルコールが生成する。
だが、ハロヒドリンの生成は、アルケンと次亜ハロゲン酸との直接の反応で起こるのではない。
水の存在下で、間接的に行われる。
ブロモヒドリンの生成
Br2がアルケンと反応する場合には、環状ブロモニウムイオン中間体がBr-と反応する。
この反応を別の試薬の存在下で行えば、中間体ブロモニウムイオンが加えた求核試薬により捕捉されて、別の生成物を与える方向に進ませることができる。
例えば、多量の水の存在下では求核試薬として水が中間体と反応し、ブロモヒドリンを与える。
以下に、その機構を示す。
実際の活用
実際には、水に溶けるアルケンは少なく、上記の反応を簡単には行えない。
そこで、Br2の供給源に、NBS と呼ばれる試薬を用いる。
溶媒には、ジメチルスルホキシド水溶液がよく利用される。
NBSは取扱いが簡単で、危険性が低い。
臭素そのものを使うこともできるが、危険性が高いため、避けるべきである。
以下に反応例を示す。
芳香環は三つのC=C結合を持つが、この条件下では、反応しない。
芳香環は非常に安定であるからである。
問題を解いてみる
シクロペンテンとNBSおよび水との反応
生成物の立体化学を示す。