VSEPRモデルの問題点
同じエネルギーを持つ二つ以上の基本構造があるとき、予測に困難が生じる。
中心原子に7つの高電子密度領域がある場合、同じようなエネルギーの配座がたくさんあるという事情から、予想が難しい。
分子の形に影響を与えない孤立電子対も存在する。
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基本形の修正が必要
反発の存在
孤立電子対は、結合電子対よりも強く、他の電子対と反発する。
ルイス構造を考え、高電子密度領域の数から分子の基本形が決まったら、結合電子対と孤立電子対との静電反発力の違いを考慮して修正しなければならない。
反発力の大小
結合電子対と孤立電子対との静電反発力の大小は以下のようになる。
孤立と孤立 > 孤立と結合 > 結合と結合
反発力の差の原因
孤立電子対間の反発が強い理由として、孤立電子対の方が結合電子対よりも平均して核の近くにあることが考えられている。
もう少し詳細に考える。
三方両錐形の場合、1個の孤立電子対がアキシアルかエクアトリアルかどちらかの位置を選べるとき、エクアトリアル位にくる。
これは、エクアトリアル位にある方が、一般的にエネルギーが低いからである。
エクアトリアル↓
アキシアル↓
ICl6-の分子の形を考える
ルイス構造を決める
分子の全価電子数はアニオンであることを考慮して、50個。
すなわち、電子対が25個できる。
以上を加味して、ルイス構造は以下のように描ける。
分子の形
ルイス構造から、分子の基本形を決める。
孤立電子対を考慮すると以下のように分子の形を決めることができる。
SF4の分子の形を考える
ルイス構造を決める
分子の全価電子数は、34個。
すなわち、電子対が17個できる。
以上から、ルイス構造は以下のように描ける。
分子の形
ルイス構造から、分子の基本形を決める。
孤立電子対(高電子密度領域)を考慮して、以下のように分子の形が決まる。
どちらの分子が予測と実際の形と異なるか
孤立電子対は分子の形に影響を及ぼす。
結合電子対との相互作用があるからだ。
結合電子対が隣接して存在し、孤立電子対が1対以上ある分子では、結合角はすべての電子対が結合電子対である場合に期待される値よりも小さくなる。
しかし、今回考える”ICl6-","SF4"の二つを比べると、どちらも上記の場合に沿っている。
このとき、1対の孤立電子対に対して多くの結合電子対が存在するICl6-は、反発の影響が分散されて、VSEPR モデルの予測と近い形になると考えられる。
したがって、SF4の方が、予測から外れた形になる。↓
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