ヤーン・テラー効果「錯体のひずみを説明する」

基礎

錯体の基底電子配置において軌道が縮退しているときは、正方歪みが起こる。

これはつまり、縮退を解消してより低エネルギー化するために錯体が歪む。

ひずみ

a

二つの配位子が中心金属イオンから離れるように動いた場合の正方歪み。

ヤーンテラー効果による錯体の正方ひずみ

b

二つの配位子が中心金属イオンに近づくように動いた場合の正方歪み。

ヤーンテラー効果による錯体の正方ひずみ

Jahn-Teller effect

六配位の銅(Ⅱ)のd錯体は、通常は八面体構造からかなり歪んで、顕著な正方歪みを示す。

高スピンd六配位錯体(Cr2やMn3)や、低スピンd六配位錯体(Ni3など)も同じような歪みを示すことがあるが、それほど一般的ではなく、歪む場合もCu2+ほど顕著ではない。

これを、ヤーン・テラー効果という。

非直線形錯体の基底電子配置において軌道が縮退し、それらが非対称に占有されているとき、縮退を解消して低エネルギー化するように錯体は歪む。

詳細

正方ひずみとは、規則的な八面体がz軸に沿って伸び、xおよびy軸に沿って縮むことに対応し、結果としてeg(dz2)軌道のエネルギーは減少し、eg(dx2-y2)軌道のエネルギーは上昇する。

つまり、1or3個の電子がeg軌道を占有している時、正方にひずむことでエネルギー的に有利となる。

d9錯体を例にとる。

歪むことで、低エネルギーのdz2軌道に2個の電子が入り、より高エネルギーのdx2-y2軌道に1個の電子が入るようになる。

以下、d軌道の電子占有を示す。

ヤーンテラー効果によるd9錯体の電子配置

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