「有機化学」反応機構の矢印の書き方ルール

はじめに

反応機構を書くときに、曲がった矢印を正しく使うためには基本のルールを知っている必要がある。

これから、反応機構における矢印の使い方を簡単に説明する。

ルール1

電子は、求核種(赤)から求電子種(青)に向かって動く。

求核種は利用可能な電子対を持たなければならない。

これは普通、非共有電子対もしくは多重結合である。

求核種から求電子種への電子の動き

求電子種は電子対を受け取ることができなければならない。

これは、正電荷を帯びているか、官能基中の正に分極した原子である。

求電子種の電子対を受け取る時の電子の流れ

ルール2

求核試薬は負に帯電しているか中性である。

求核試薬が負に帯電している場合、電子対を渡した原子は中性になる。

電子対を渡した原子が中性になることを示した

求核試薬が中性の場合、電子対を渡した原子は正に荷電する。

電子対を渡した原子が正に帯電することを説明した

ルール3

求電子試薬は正に帯電しているか中性である。

求電子試薬が正に荷電しているなら、この電荷を持つ原子は電子対を受け取った後には中性になる。

電荷を持つ原子は電子対を受け取った後に中性になることを示した

求電子試薬が中性の場合、最終的に電子対を受け取った原子は負に帯電する。

これが起こるには、負電荷は酸素、窒素、ハロゲンのような電気陰性な原子上で安定化されなければならない。

炭素や水素は一般的には負電荷を安定化できない。

最終的に電子対を受け取った原子が負に帯電することを示した

ルール2、3のまとめ

ルール2、3をまとめると、電荷は反応の間で保持されているということ。

一つの出発物の負電荷は一つの生成物に負電荷を与え、一つの出発物の正電荷は一つの生成物に正電荷を与える。

ルール4

オクテット則は守らなければならない。

つまり、第二周期の原子で10電子を持つ原子があってはならないということ。

水素の場合、4電子。

すでにオクテットである原子に電子対が動けば、同時にこの原子から別の電子対が移動してオクテットを保持しなければならない。

例えば、エチレンのC=C結合からH3Oの水素原子に電子対が動けば、この水素から2電子が離れて行かなけらばならない。

これは、H-O結合が切断され、電子は酸素上に残り、中性の水を与えなければならないことを示す。

オクテット則を守らなければならないことを示した図

実際の反応機構を書いてみる

問題1

次の極性反応に矢印を加えて、電子の流れを示す。

問題1の反応機構を書く前の反応式

解き方

まず、どんな結合変化が起こっているかを調べる。

今回は、C-Br結合が切れてC-C結合が生じる。

C-C結合の生成は左側の出発物の求核的なC原子からCH3Brの求電子的なC原子への電子対が供与されることでなされるので、負に荷電したC原子の非共有電子対からCH3BrのC原子に向けて矢印を書くことになる。

C-C結合が生成すると同時にオクテット即が破られないようにCーBr結合が切れなければならない。

C -Br結合から始まってBrに向けた第二の矢印を書く。

電子を受け取った臭素はそこで安定なBrとなる。

反応機構の電子の流れを説明する
問題1

問題2

問題2の反応機構を書く前の反応式

解答

問題2の反応機構を示した

問題3

問題3の反応機構を書く前の反応式

解答

問題3の反応機構を示した

問題4

問題4の反応機構を書く前の反応式

解答

問題4の反応機構を示した


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