基底状態の炭素原子の電子配置
炭素(C)の原子番号は6であり、中性の炭素原子は6個の電子を持つ。電子は原子核の周りにある軌道に配置されるが、軌道はエネルギー準位に基づいて配置されている。炭素原子の基底状態における電子配置は次のようになる:
1sおよび2s軌道
最初のエネルギー準位には、1s軌道が存在する。1s軌道は球形であり、2つの電子が収容される。炭素原子では、この1s軌道にまず2つの電子が配置される。次に、2s軌道が存在し、ここにも2つの電子が入る。
電子配置として表すと、1s² 2s² 2p² となる。ここで、最もエネルギーの低い「基底状態」では、電子は2s軌道と2p軌道にそれぞれ配置されるが、2p軌道は3つの等価な軌道(2px、2py、2pz)に分かれる。基底状態では、2p軌道に2つの電子が、スピンが反対向きにならないように別々の軌道に配置される。
2p軌道とHundの規則
2p軌道は3つの等価な軌道(px、py、pz)から構成されており、基底状態ではこの軌道に1個ずつ電子が配置される。これは、電子が可能な限り同じエネルギー準位に分散することを優先する「Hundの規則」に従っている。
炭素の基底状態での電子配置をまとめると、次のようになる。
- 1s軌道: 2個の電子
- 2s軌道: 2個の電子
- 2p軌道: 2個の電子(px、pyそれぞれに1個ずつ)
基底状態のエネルギー
この基底状態は、炭素原子が安定した最もエネルギーの低い状態であり、化学的に反応する準備が整った状態ではない。基底状態では、炭素は2つの未結合電子を持っており、このままでは他の原子と十分に結合できる状態にはない。例えば、炭素原子が4つの結合を形成するためには、さらなる変化が必要である。
原子軌道の「昇位」とは何か
炭素原子が他の原子と結合する際、電子の配置は変化する。この変化は「昇位」として知られており、炭素の結合特性を大きく左右する。
昇位の概念
昇位(promotion)とは、炭素原子の電子が基底状態からより高いエネルギー準位に移動する現象である。炭素原子が共有結合を形成する際、2s軌道にある1つの電子が2p軌道に昇ることで、4つの等価な電子軌道が形成される。このプロセスにより、炭素は4つの未結合電子を持つことになり、最大で4つの結合を他の原子と形成できるようになる。これにより、メタン(CH₄)のような分子構造が可能になる。
練習問題
- 基底状態の炭素原子の電子配置を答えよ。
- 昇位とはどのような現象か説明せよ。
- sp³混成軌道はどのようにして形成されるか説明せよ。
- エチレン(C₂H₄)分子における炭素の軌道混成の種類を答えよ。
- sp混成軌道はどのような結合を形成するか説明せよ。
解答
- 1s² 2s² 2p²。
- 炭素原子が基底状態から電子を高エネルギー準位の軌道に移動させることで、4つの未結合電子を持つようになる現象。
- 1つの2s軌道と3つの2p軌道が混成して、4つの等価なsp³軌道を形成する。
- sp²混成軌道。
- 2つのπ結合と1つのσ結合から構成される三重結合を形成する。