![[CuCl₅]³⁻錯体の三方両錐形構造における結合距離について解説](https://i0.wp.com/entropy.jp/wp-content/uploads/2024/07/エントロピー-91-2.jpg?fit=640%2C400&ssl=1)
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[CuCl₅]³⁻錯体の概要
[CuCl₅]³⁻錯体は、中心金属である銅(Cu²⁺)イオンが5つの塩化物イオン(Cl⁻)と結合して形成される錯体である。
この錯体は、三方両錐形(トリゴナル・バイピラミッド)という特定の配位幾何を持ち、5つのリガンドが中心金属イオンの周りに配置される。
三方両錐形構造の特徴
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三方両錐形構造は、3つのリガンドが平面上(エクアトリアル位)、残りの2つのリガンドがその平面の上下に配置される(アキシアル位)という形状を持つ。
これは、五配位錯体に典型的な配位形態であり、特にd¹⁰構造を持つ遷移金属錯体においてよく見られる。
アキシアルおよびエクアトリアルの結合距離
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アキシアル結合距離
アキシアル位の結合距離は、錯体の中心にある銅イオンと、平面の上下に位置する2つの塩化物イオン(Cl⁻)との間の距離である。
この距離は、エクアトリアル位の結合距離よりも一般的に長くなる傾向がある。この理由は、配位子間の反発力や配位形状に起因する。
具体的には、アキシアル位の配位子は、エクアトリアル位の配位子とより強く相互作用するため、これによってアキシアル結合距離が長くなる。また、中心金属イオンの電子配置やd軌道の分裂が結合距離に影響を与える。
エクアトリアル結合距離
エクアトリアル位の結合距離は、錯体の平面内に配置されている3つの塩化物イオン(Cl⁻)との間の距離である。
エクアトリアル位の結合距離は、アキシアル位の結合距離に比べて短い傾向がある。この違いは、エクアトリアル位に位置する配位子同士の空間的な制約や反発力がアキシアル位よりも少ないことによる。
また、三方両錐形構造におけるエクアトリアル位のリガンドの配置は、より安定な配位形態をとるため、結合距離が短くなりやすい。
結合距離の違いについて解説
五つのCu-Cl結合のうち、上下二つのアキシアル結合にはdp混成軌道が寄与し、これらに垂直な三つのエクアトリアル結合にはsp2混成軌道が寄与するため、アキシアル結合とエクアトリアル結合とで長さが異なる。
具体的に
[CuCl₅]³⁻の三方両錐形構造において、アキシアル位置のCl-はCu2+を挟んで直線的に並び、Cu-Clの結合距離は229.6 pmである。
一方、エクアトリアル位置のCl-は正三角形の構造を作り、Cu-Clの結合距離は239.1 pmとなる。
結論
[CuCl₅]³⁻錯体における三方両錐形構造では、アキシアル結合距離はエクアトリアル結合距離よりも一般的に長くなる。
この結合距離の差は、配位子間の相互作用や中心金属イオンの電子配置、d軌道の分裂などに影響される。
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