可塑剤(DEHP, DBP)について解説

可塑剤(かそざい)は、プラスチックの柔軟性や加工性を向上させるために添加される化学物質である。

特に、ポリ塩化ビニル(PVC)といった硬いプラスチックに可塑剤を加えることで、柔らかく弾力性のある性質を持たせることができる。このように、可塑剤は日常生活のさまざまな製品に使用されているが、その中でもDEHP(ジエチルヘキシルフタル酸エステル)やDBP(ジブチルフタル酸エステル)は特に問題視されてきた。

1. 可塑剤の基本的な役割

1-1. 可塑剤とは何か?

可塑剤は、プラスチックやゴムなどの高分子材料に添加することで、材料の硬度を下げ、柔軟性や耐久性を向上させる物質である。これにより、プラスチックはさまざまな形状に成形しやすくなり、幅広い用途で利用可能になる。代表的な可塑剤としては、フタル酸エステル類が挙げられ、その中でも特にDEHPとDBPが多く使用されている。

1-2. DEHPとDBPの化学的特徴

DEHP(Di(2-ethylhexyl) phthalate)は、長鎖アルキル基を持つフタル酸エステルであり、PVCの柔軟性を高めるために広く使われてきた。

DBP(Dibutyl phthalate)は、比較的短いブチル基を持ち、DEHPよりも可塑化効果が低いが、他のプラスチックやゴムにも使用される。

2. 可塑剤の用途とその添加割合

2-1. 日常生活における可塑剤の使用例

可塑剤は、プラスチック製品の多くに添加されており、特に柔らかいプラスチック製品にはその割合が大きい。例えば、以下のような製品が挙げられる。

  • 血液バッグや輸血用チューブなどの医療機器
  • ビニール製の床材や壁紙
  • 食品包装材
  • 玩具やスポーツ用品
  • 電線の被覆材

2-2. プラスチックにおける可塑剤の含有割合

柔らかいプラスチックには、50%以上の可塑剤が添加されることもあり、特に柔軟性が重要な医療器具や日用品に多く含まれている。この高い添加量が問題となるケースも存在する。

3. 可塑剤規制の現状と代替技術

3-1. 可塑剤に対する規制

欧州連合(EU)では、REACH規制に基づき、DEHPやDBPといったフタル酸エステル類の使用が厳しく制限されている。特に、玩具や医療機器における使用は厳格に管理されている。また、アメリカでも、環境保護庁(EPA)や食品医薬品局(FDA)が可塑剤の使用に関して規制を強化している。

3-2. 代替物質の開発

近年では、フタル酸エステルに代わる可塑剤の開発が進められている。例えば、アジピン酸エステルやシトラートエステルなど、より安全性が高いとされる物質が注目されている。これにより、可塑剤による健康リスクを低減することが期待されている。

4. 練習問題

問題 1: 可塑剤の主な役割は何か?

解答: プラスチックの柔軟性を高めることである。

問題 2: DEHPの主な使用用途を2つ挙げよ。

解答: 血液バッグや輸血用チューブ、ビニール製床材など。

問題 3: 輸血用チューブから溶出した物質は何か?

解答: DEHP。

問題 4: DEHPやDBPが有害とされる理由は何か?

解答: 内分泌かく乱作用や発がん性のリスクがあるため。

問題 5: DEHPに代わる安全性の高い可塑剤の例を1つ挙げよ。

解答: シトラートエステル。