沸点上昇について解説!

概要

沸点上昇(ふってんじょうしょう)は、溶媒に溶質を溶かすことで、溶媒の沸点が上昇する現象を指す。

これはコラジガティブ特性の一つであり、溶液の物理的性質が溶質の種類に依存せず、溶質の粒子数にのみ依存する性質である。

本記事では、沸点上昇の原理、計算方法、実生活への応用について詳述する。

沸点上昇の原理

理論的背景

沸点上昇の発見。

溶媒に不揮発性の溶質を溶かした溶液の沸点は、溶質の質量にほぼ比例して上昇する事がわかった。

この時、非電解質であれば、その上昇度は物質の種類には無関係で、物質量だけによることが知られている。

これは束一性の代表的な例である。

溶質の粒子が溶媒分子の表面に存在し、溶媒分子が気体になるのを妨げるためである。

この結果、溶液の蒸気圧が純溶媒の蒸気圧よりも低くなるため、沸点が上昇する。この現象はラウールの法則に基づき説明される。

ラウールの法則

ラウールの法則は、溶液の蒸気圧低下を説明する法則であり、次の式で表される。

ここで、

  • ΔP は蒸気圧の低下量
  • P0 は純溶媒の蒸気圧
  • xBは溶質のモル分率

蒸気圧が低下すると、沸点は次の関係式で上昇する。

ここで、

  • ΔTb​ は沸点の上昇量
  • Kb は溶媒の沸点上昇定数
  • m はモル濃度(モル/kg)

純水と水溶液の沸点の違いについて考えてみよう。

溶液の蒸気圧が溶媒そのものの蒸気圧より小さくなることはラウールの法則より導かれるので、次の図から蒸気圧降下と沸点上昇が比例関係にある事が分かる。

ただし十分に希薄な水溶液でなければラウールの法則が成立しないことは当然であって、希薄なら2つの蒸気圧曲線は十分に平行だと見なす事ができる。

沸点上昇の計算方法

基本的な計算式

沸点上昇は次の式で計算される。

ここで、

  • i はファクター(イオン化度)
  • Kb​ は溶媒の沸点上昇定数(例えば、水の場合は約0.512 °C·kg/mol)
  • m は溶質のモル濃度

実際の計算例

例えば、1000gの水に2モルのNaClを溶かした場合の沸点上昇を計算する。

  1. 溶質のモル濃度 m を求める
  2. ファクター i を求める: NaClは完全に電離するため、i=2
  3. 沸点上昇 ΔTbを計算する

よって、沸点は2.048°C上昇する。

実生活への応用

調理と食品産業

沸点上昇は調理においても重要な役割を果たす。

例えば、塩水でパスタを茹でると、塩が水の沸点を上昇させ、調理温度が高くなるため、パスタがより速く調理される。

化学工業

化学工業においても、沸点上昇は溶液の濃縮や分離プロセスに利用される。

蒸発や蒸留によって溶液から溶媒を取り除く際に、沸点の変化を考慮する必要がある。

医療と薬学

医療や薬学分野では、薬剤の溶液を調製する際に沸点上昇を利用する。

特に、点滴などの医療用溶液では、適切な濃度を保つために沸点上昇の原理が活用される。

関連情報

コラジガティブ特性

沸点上昇はコラジガティブ特性の一つであり、他にも凝固点降下、浸透圧、蒸気圧降下などがある。

これらは全て、溶質の粒子数に依存する特性である。

溶質の種類と効果

溶質の種類によって沸点上昇の程度は異なる。

電解質(例:NaCl)は非電解質(例:糖)よりも大きな影響を与える。これは、電解質が溶解してより多くの粒子を生成するためである。

実験と測定

沸点上昇を測定するためには、正確な温度計と沸点上昇定数のデータが必要である。

実験では、溶液を沸騰させ、その温度変化を記録することで沸点上昇を確認する。

練習問題と解答

問題1

  1. 500gの水に1モルのグルコース(非電解質)を溶かした場合の沸点上昇を求めよ。

解答1

問題2

  1. 200gの水に0.5モルのKBr(完全に電離する)を溶かした場合の沸点上昇を求めよ。

解答2

問題3

  1. 1.5kgの水に3モルのNa₂SO₄を溶かした場合の沸点上昇を求めよ。

解答3

問題4

  1. 250gの水に0.1モルのCaCl₂を溶かした場合の沸点上昇を求めよ。

解答4

問題5

  1. 1kgの水に0.5モルのアルコール(非電解質)を溶かした場合の沸点上昇を求めよ。

解答5

結論

沸点上昇は溶液の性質に影響を与える重要な現象であり、様々な分野で応用されている。

理解と計算方法を身に付けることで、実生活や専門的な応用において有益な知識となるであろう。

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