リチウムイオンポリマーバッテリーは、現代の携帯機器や電気自動車の中核を成す高エネルギー密度の二次電池である。本記事では、このバッテリーの構造、特性、及びその基盤となる「イオン伝導性材料」について解説する。
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リチウムイオンポリマーバッテリーの基本構造
リチウムイオンポリマーバッテリーは、リチウムイオンをキャリアとして利用する二次電池である。主要な構成要素は以下の3つである。
1. 正極材料
正極には主にリチウムコバルト酸化物(LiCoO₂)が用いられる。この材料はリチウムイオンを含有し、充放電の過程でリチウムイオンを放出・受容する役割を担う。正極での反応式は以下の通りである:
- 放電時:
LiCoO₂ → Li₁₋xCoO₂ + xLi⁺ + xe⁻ - 充電時:
Li₁₋xCoO₂ + xLi⁺ + xe⁻ → LiCoO₂
2. 負極材料
負極にはグラファイト(炭素材料)が用いられる。グラファイトはリチウムイオンを挿入および脱挿する性質を持つ。負極での反応式は以下の通りである:
- 放電時:
C₆ + xLi⁺ + xe⁻ → LiₓC₆ - 充電時:
LiₓC₆ → C₆ + xLi⁺ + xe⁻
3. 高分子固体電解質
高分子固体電解質は、塩(リチウム塩)がポリマー中で溶解し、イオン伝導性を示す材料である。高分子電解質の特徴は、軽量で形状の自由度が高い点であり、液漏れのリスクを低減できる。
イオン伝導性材料とは何か?
イオン伝導性材料とは、媒体内でイオンが移動することで電気伝導性を示す材料を指す。この材料はバッテリーの性能を左右する重要な要素であり、以下の条件を満たすことが求められる:
- 高いイオン伝導率
実用的な電気伝導率を持つ必要があり、特にリチウムイオンの移動を効率的に行うことが重要である。 - 安定性
長期使用に耐え得る化学的・熱的安定性を有する。 - 適合性
正極・負極との電気的および化学的な適合性が求められる。
高分子固体電解質の特性と利点
高分子固体電解質は、リチウム塩が溶解した有機系ポリマー(例:ポリエチレンオキシド(PEO)やポリアクリロニトリル(PAN))で構成される。この電解質の特徴は以下の通りである:
- 軽量性:
固体構造のため、液体電解質に比べて軽量である。 - 形状の自由度:
成形が容易であり、薄膜化や特定の形状への加工が可能である。 - 液漏れの回避:
液体成分を含まないため、液漏れや安全性のリスクを低減できる。
一方で、固体電解質のイオン伝導率は液体電解質に劣る場合があり、温度依存性が高いという課題も存在する。
リチウムイオンポリマーバッテリーの反応メカニズム
正極での反応
正極ではリチウムイオンが放出され、電子が外部回路を通じて負極に移動する。これにより、電流が流れる。
負極での反応
負極では、正極から放出されたリチウムイオンがグラファイト層に挿入される。この過程が効率的に行われることで、高いエネルギー密度を実現する。
練習問題
問題1: リチウムイオンポリマーバッテリーの主な構成要素を3つ挙げ、それぞれの役割を簡単に説明せよ。
解答例
- 正極:リチウムイオンの放出・受容を行う。例としてLiCoO₂を使用。
- 負極:リチウムイオンを挿入・脱挿する。例としてグラファイトを使用。
- 高分子固体電解質:リチウムイオンの移動を媒介する。
問題2: 高分子固体電解質の利点を2つ挙げよ。
解答例
- 液漏れのリスクがない。
- 軽量かつ形状の自由度が高い。
問題3: 正極における充放電時の化学反応式を示せ。
解答例
充電時: Li₁₋xCoO₂ + xLi⁺ + xe⁻ → LiCoO₂
放電時: LiCoO₂ → Li₁₋xCoO₂ + xLi⁺ + xe⁻
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