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ポリエチレン(PE)は、工業用や日用品に広く使用される高分子であり、その結晶化において形成される「単結晶」と「球晶」は重要な構造である。以下に、単結晶と球晶構造の形成過程、構造、特性の共通点および相違点について詳細に解説する。
単結晶と球晶構造の概要
ポリエチレンの単結晶
ポリエチレンの単結晶は、ポリエチレンをキシレン希薄溶液に溶解し高温に加熱後、冷却・乾燥することで得られる。生成される結晶は厚さが10nm程度の菱形(ダイヤモンド形)で、分子鎖が結晶の厚み方向に沿って整然と平行に配列している。単結晶におけるポリエチレン鎖は規則的に折りたたまれており、この配列は結晶の機械的強度や物理的性質に大きく寄与している。
ポリエチレンの球晶
一方、ポリエチレンの融体を融点以上から冷却すると球晶と呼ばれる構造が生成する。球晶は、溶融状態のポリエチレンが冷却に伴い核を形成し、その核から放射状に結晶が成長して形成される球状の高次構造である。この構造では、ポリエチレン鎖が折りたたまれて結晶化し、リボン状の結晶片(ラメラ)がねじれながら球状に成長する。ラメラが成長する際、別の核から成長した球晶とぶつかることで結晶成長が停止する。
単結晶と球晶の共通点
- 分子鎖の折りたたみ構造
単結晶および球晶の両者ともに、ポリエチレン分子鎖は折りたたまれた形で結晶化している。これは、ポリエチレンが結晶を形成する際のエネルギー的に安定な配列である。 - 単位胞の分子鎖パッキング構造
単結晶と球晶は共通の単位胞構造を持ち、そのパラメータは a=0.740 nm、b=0.493 nm、c=0.253 nm、β=110.7°である。したがって、両者は分子スケールでは同一の格子構造を共有している。
単結晶と球晶の相違点
- 生成条件と方法
単結晶は希薄溶液を用いた冷却・乾燥プロセスで形成され、薄い菱形の結晶が生成する。一方、球晶はポリエチレン融体の冷却過程で核を起点に等方的に成長し、球状の高次構造を形成する。この違いにより、最終的な結晶の形状とサイズが異なる。 - 形態と成長様式
単結晶は平面的な菱形構造を持ち、結晶の成長は主に二次元的に進行する。対して、球晶は三次元的に等方的な成長を行い、球状の形態を取る。ラメラがねじれながら成長するため、球晶の内部には層状の構造が球心に向かって放射状に配置される。 - 結晶の厚み方向の分子鎖配列
単結晶では分子鎖が厚み方向に平行に並ぶため、構造がより均一であるが、球晶はラメラがねじれながら成長するため、各ラメラ内の配列は異なる方向に向く傾向がある。これにより、球晶の構造はやや複雑である。
単結晶と球晶のまとめ
特性 | 単結晶 | 球晶 |
---|---|---|
生成方法 | キシレン希薄溶液を加熱後冷却・乾燥 | ポリエチレン融体を冷却 |
形状 | 菱形 | 球状 |
成長様式 | 二次元的成長 | 三次元的成長(等方的) |
分子鎖の折りたたみ | あり | あり |
単位胞構造 | a=0.740 nm, b=0.493 nm, c=0.253 nm, β=110.7° | a=0.740 nm, b=0.493 nm, c=0.253 nm, β=110.7° |
練習問題
- 単結晶と球晶が共通する結晶構造の単位胞パラメータを答えよ。
- 解答: 単位胞パラメータは a=0.740 nm、b=0.493 nm、c=0.253 nm、β=110.7°である。
- 単結晶と球晶の形状の違いを説明せよ。
- 解答: 単結晶は平面的な菱形で、二次元的に成長する。一方、球晶は球状であり、三次元的に等方的に成長する。
- 球晶が形成される際に重要なプロセスについて説明せよ。
- 解答: 球晶は、ポリエチレン融体が冷却されるとまず結晶核が生成され、その核を中心にラメラが等方的に成長して球状構造が形成される。
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