二硫化物(S₂)と二硫化物イオン(S₂²⁻)の原子価軌道のMOエネルギー準位図

「二硫化物」と「二硫化物イオン」の原子価軌道の分子軌道(MO)エネルギー準位図は、これらの化学種の電子配置と結合性を理解するために重要である。

以下に、それぞれの化学種についてのMOエネルギー準位図の概念を説明し、具体的なエネルギー準位と軌道配置について解説する。

1. 二硫化物分子 (S₂)

1.1 二硫化物分子の構造と基本的性質

二硫化物分子(S₂)は、硫黄原子2つが結合した分子である。

この分子はS-S結合を持ち、酸素分子(O₂)と類似の電子配置を持つことが知られている。

二硫化物分子は、電子的には酸素分子に似ているが、S-S結合距離や結合エネルギーは異なる。

1.2 S₂分子の原子価軌道

硫黄原子の原子価軌道は、3s軌道と3p軌道から成る。

これらの軌道から分子軌道が形成され、結合性や反結合性の分子軌道ができる。

2. 二硫化物イオン (S₂²⁻)

2.1 二硫化物イオンの構造と基本的性質

二硫化物イオン(S₂²⁻)は、二硫化物分子が2つの電子を受け取った状態である。このため、全体の電子数は18個となる。

二硫化物イオンは、陰イオンとしての安定性を持ち、硫化物鉱物などで見られる。

2.2 S₂²⁻イオンの原子価軌道

S₂²⁻イオンも同様に、3s軌道と3p軌道から分子軌道が形成される。

ただし、余分な2つの電子が反結合性軌道に入ることによって、分子の結合性が弱まる。

S₂とS₂²⁻のMOエネルギー準位図

この図から分かるように、S₂は孤立電子対をもつので常磁性がある。

3. 結論

二硫化物分子(S₂)と二硫化物イオン(S₂²⁻)のMOエネルギー準位図を比較すると、電子配置の違いが結合性に大きく影響を与えることが分かる。

特に、S₂²⁻では反結合性軌道への電子の追加によって結合強度が減少し、より安定したイオン性を持つ化学種となる。

4. 練習問題

4.1 S₂分子の結合次数を求めよ。

解答: S₂分子の結合性軌道には10個の電子があり、反結合性軌道には6個の電子がある。

結合次数は(結合性電子数 - 反結合性電子数)/2で計算できるため、(10 - 6)/2 = 2となる。従って、結合次数は2である。

4.2 S₂²⁻イオンの結合次数を求めよ。

解答: S₂²⁻イオンの結合性軌道には10個の電子があり、反結合性軌道には8個の電子がある。

結合次数は(10 - 8)/2で計算できるため、(10 - 8)/2 = 1となる。従って、結合次数は1である。

4.3 二硫化物イオンと二硫化物分子の安定性を比較せよ。

解答: 二硫化物イオン(S₂²⁻)は反結合性軌道に2つの電子を持つため、結合次数が1であり、二硫化物分子(S₂)の結合次数2よりも弱い結合を持つ。このため、S₂²⁻はS₂よりも結合が弱く、イオンとしての安定性を持つ。

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