クロトン酸メチルの化学構造式
クロトン酸メチル(methyl (E)-2-butenoate)は、二重結合を含む1,2-二置換エチレンの一例であり、化学式はC6H8O2である。その構造は以下のように表される。
この構造では、エチレン部位である「CH=CH」部分の片側にメチル基(CH3)、もう片方にカルボキシ基がメチルエステル化された部分(COOCH3)が置かれており、E-配置(トランス配置)となっている。
立体規則性高分子の繰り返し単位
クロトン酸メチルのような1,2-二置換エチレンモノマーは、付加重合によって立体規則性の高分子を形成する。この重合体の主鎖を平面ジグザグ構造で表すとき、置換基(RおよびR')が同じ側にある場合をトレオ(threo)、逆側にある場合を**エリトロ(erythro)**と呼ぶ。
また、1,2-二置換エチレン重合体における立体規則性には以下の3種類がある:
- エリトロージインタクチック
- トレオージイソタクチック
- ジシンジオタクチック
1. エリトロージインタクチック
エリトロ配置でジインタクチックな場合、繰り返し単位が「エリトロ型」で配置され、隣り合う単位の置換基が交互の側に位置する。
エリトロジインタクチック重合体では、平面ジグザグ鎖において交互の位置に置換基が配置され、分子の立体規則性がエリトロ型で均一となっている。
2. トレオージイソタクチック
トレオ配置でイソタクチックな場合、すべての置換基が同一側に揃っており、繰り返し単位が「トレオ型」で構成される。
トレオージイソタクチック重合体では、平面ジグザグ鎖においてRとR'が同じ側に連続して配置されるため、分子鎖全体にわたって対称性が高い立体配列を持つ。
3. ジシンジオタクチック
ジシンジオタクチック重合体は、トレオとエリトロの関係が交互に繰り返される配置であり、置換基の位置が交互に変化する構造である。
この配置では、隣り合う置換基の配置が交互に入れ替わり、ジグザグ構造の平面内で位置が変化する特徴的なパターンを示す。
立体規則性高分子の意義と応用
1,2-二置換エチレンのような重合体は、立体配列の違いにより物理的性質や結晶性に変化が現れる。例えば、エリトロージインタクチック構造は、立体規則性により結晶性が高くなり、強度や耐熱性が向上する。
一方でトレオージイソタクチックな構造は可塑性が高く、柔軟な材料としての用途に向く。
練習問題
- クロトン酸メチルの構造を示し、エリトロとトレオの違いを説明せよ。
- 解答: クロトン酸メチルはCH3-CH=CH-COOCH3で、エリトロ配置はRとR'が交互、トレオ配置は同じ側に並ぶ。
- トレオージイソタクチックとエリトロージインタクチックの違いを述べよ。
- 解答: トレオージイソタクチックは同側に置換基が並び、エリトロージインタクチックは交互に並ぶ。
- 1,2-二置換エチレンの重合体が持つ構造的特徴を挙げ、それが物性にどう影響するか説明せよ。
- 解答: 立体規則性は結晶性や可塑性に影響し、エリトロ配置は結晶性を高め、トレオ配置は柔軟性を高める。