合成レシピ

TLC(薄層クロマトグラフィー)は、有機合成化学における重要な分析手法であるが、紫外線で検出できない化合物については、適切な発色剤を用いることで可視化する必要がある。

本記事では、実験室で一般的に使用されるTLCの代表的な発色剤とそのレシピについて詳しく解説する。


p-アニスアルデヒド

概要

p-アニスアルデヒドは、さまざまな化合物に対して異なる発色を示すため、化合物の種類を識別するのに役立つ。この特性により、Rf値が同じ化合物でも、異なる発色によって識別が可能となる。ただし、強い臭気があるため、換気の良い環境で使用することが推奨される。

レシピ

  • p-アニスアルデヒド:12g(11mL)
  • エタノール:500mL
  • 濃硫酸:5mL

使用法

TLC板を発色剤溶液に浸し、ホットプレートまたはヒートガンで加熱することで、スポットが現れる。発色後はすぐにスポットを記録する。


硫酸セリウム

概要

硫酸セリウムは、ほとんどの化合物に対して黄色または茶色の発色を示すため、一般的によく使われる発色剤である。幅広い化合物に対応可能で、反応性が高い。

レシピ

  • 硫酸セリウム:8g
  • 15%硫酸:100mL

使用法

発色後、ホットプレートで加熱することでスポットが現れ、容易に検出できる。発色が安定しており、スポットが明瞭になる。


セリウムモリブデン酸(Hanessianの発色剤)

概要

セリウムモリブデン酸は感度が非常に高い発色剤で、ほぼすべての官能基に反応するため、汎用性が高い。ただし、発色がすべて青色になるため、化合物の種類によって色の識別が難しい場合がある。

レシピ

  • 硫酸セリウム(Ce(SO4)):25g
  • アンモニウムモリブデン酸((NH4)6Mo7O24・4H2O):25g
  • 濃硫酸:50mL
  • :450mL

使用法

TLC板を発色剤溶液に浸し、加熱することで全てのスポットが青色に発色する。スポットが明瞭になるため、感度の高い検出が可能。


ヨウ素

概要

ヨウ素蒸気による発色法は、化合物のスポットがゆっくりと黄色に発色する。この方法の利点は簡便であり、特別な溶液を準備する必要がない。しかし、発色は時間とともに消えるため、スポットが現れたらすぐに記録する必要がある。

使用法

ヨウ素を密閉されたガラス容器内に置き、その蒸気にTLC板をさらすことでスポットが発色する。発色が消えやすいので、速やかな記録が求められる。


過マンガン酸カリウム(KMnO4)

概要

KMnO4は、酸化されやすい官能基に対して発色を示すが、実際には多くの化合物に対しても反応するため、汎用的な発色剤として広く使用される。感度は中程度で、スポットは黄色に発色する。

レシピ

  • 過マンガン酸カリウム(KMnO4):6g
  • 炭酸カリウム(K2CO3):40g
  • 5%水酸化ナトリウム水溶液:10mL
  • :600mL

使用法

発色は加熱によって促進されるが、加熱しすぎるとTLC全体が黄色くなり、スポットの識別が難しくなるため、加熱のタイミングには注意が必要。


ニンヒドリン

概要

ニンヒドリンは、アミノ基、特に脂肪族アミンやアニリンに特化した発色剤であり、アミン化合物の検出に有効である。非常に感度が高いが、取り扱いに注意が必要である。ニンヒドリンが手につくと皮膚に反応してしまうことがあるため、慎重に扱う。

レシピ

  • ニンヒドリン:0.25%の水溶液

使用法

TLC板にニンヒドリン溶液を適用し、加熱することでアミン類が紫色に発色する。アミン類の検出に非常に効果的である。


リンモリブデン酸(PMA)

概要

リンモリブデン酸(PMA)は、非常に感度の高い発色剤であり、すべてのスポットが青色に発色する。多様な化合物に対して反応するため、汎用的に使用される。最近では、20%エタノール溶液として市販されており、5%に希釈して使用されることが多い。

レシピ

  • リンモリブデン酸:12g
  • エタノール:500mL

使用法

TLC板を溶液に浸し、加熱することで青色に発色する。発色が非常に鮮やかで、検出感度が高い。


バニリン

概要

バニリンはp-アニスアルデヒドと同様に、化合物の種類によって異なる発色を示す。また、バニラの香りを発するため、実験室に独特の匂いが広がる。発色の特性から、化合物の識別に役立つが、香りが強いため、換気に注意が必要である。

レシピ

  • バニリン:12g
  • エタノール:250mL
  • 濃硫酸:50mL

使用法

TLC板を溶液に浸し、加熱することでスポットが現れる。発色の色は化合物の種類に応じて変わり、識別に役立つ。