顔料粒子の凝集評価と分散性

顔料分散評価法は、顔料粒子の凝集体がどの程度解凝集されているか、また分散度を定量的に評価するための重要な手法である。この評価は、分散系の安定性やフロキュレートの形成度を正確に把握することが目的である。

本記事では、顔料分散評価の基本原理、具体的手法、関連する理論について詳しく解説する。


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分散度の評価における基本的な考え方

顔料分散を評価する際には、顔料粒子が凝集しているか、または解凝集された状態かを評価することが重要である。分散度は、粒子が均一に分散されているかどうかを示す指標であり、分散性の高い状態ほど、塗料やインクなどの製品の品質が向上する。

分散度の評価方法として、光散乱法や光回折法などの粒子測定装置がよく用いられる。これらの装置を用いることで、顔料粒子の粒径分布や凝集体の大きさを計測することが可能である。特に分散液中で粒子が均一に分散されるためには、高分子溶液や分散剤を用いることが一般的である。


フロキュレートの形成度と分散性の関係

顔料粒子の分散状態を把握する上で重要な指標の1つにフロキュレート(凝集体)の形成度がある。フロキュレートとは、分散系内で粒子が再凝集してできた構造体であり、その形成度を評価することで、分散性の程度を見積もることができる。

降伏値の測定

降伏値(yield stress)は、分散液を流動させるために必要な最小限の力を示す物理量であり、これを測定することでフロキュレート形成の程度を定量化できる。具体的には、次のような関係式を用いて評価する

ここで、

  • S はずり応力、
  • τ0​ は降伏値、
  • η​ は無限大ずり速度での見かけ粘度、
  • D はずり速度(回転数)を表す。

この式を用いると、測定された値をプロットすることで降伏値 τ0\tau_0τ0​ を容易に求めることが可能である。


測定方法の具体例:キャッソンモデルの活用

キャッソンモデルは、分散液のレオロジー特性を記述するために広く利用される。ずり応力 SSS とずり速度 DDD の間に直線関係が得られるため、降伏値をグラフから直接読み取ることができる。

測定プロセス

  1. 回転粘度計の準備
    円錐-円盤型粘度計を用いて、サンプルの流動特性を測定する。これにより、ずり速度とずり応力のデータを取得する。
  2. データのプロット
    測定された √S​ と √D の値をプロットし、直線の傾きと切片を分析する。
  3. 降伏値の算出
    プロットの切片から降伏値 τ0​​ を算出し、フロキュレート形成の程度を評価する。

測定における注意点

測定を行う際には、以下の点に留意する必要がある:

  1. 分散剤の選択
    適切な分散剤を選ばないと、粒子が凝集したままの状態で測定が行われ、正確な評価ができなくなる。
  2. 分散系の安定性
    測定中に粒子が沈降したり凝集したりするのを防ぐため、サンプルの取り扱いには慎重を期すべきである。
  3. 測定装置の校正
    回転粘度計やその他の測定装置は、定期的に校正し正確なデータを取得できる状態に保つ必要がある。

練習問題と解説

問題1:降伏値の計算

測定データとして以下が得られた。

このとき、降伏値 τ0 を計算せよ。

解答と解説
与えられた式

に代入する

したがって、降伏値は τ0=1.69 である。


問題2:フロキュレート形成度の評価

分散液中の粒子がフロキュレートを形成しやすい条件として、どのような要因が影響するかを答えよ。

解答と解説
フロキュレート形成には以下の要因が影響する:

  1. 分散剤の量が不足している場合
    粒子間の凝集力が強まり、フロキュレートが形成される。
  2. 溶媒の極性が低い場合
    粒子間の静電的反発力が弱まり、凝集が進行する。

問題3:キャッソンモデルの直線関係

キャッソンモデルにおいて、プロットが非直線になる原因を1つ挙げよ。

解答と解説
非直線になる主な原因は、測定温度の不安定性である。温度変化により粘度が変化し、データの線形性が損なわれる可能性がある。


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