
原子の大きさは固定的ではない
原子の中で電子は決まった道筋を通らないため、原子全体の大きさは単純には決定できない。電子の軌道は量子力学的な不確定性により曖昧であり、一定の範囲に存在する可能性をもって広がっている。
そのため、原子の大きさは「決まった境界」を持たず、環境に応じて変化する性質をもつ。
さらに、原子が置かれている環境が化学的結合を含んでいるかどうか、またどのような相手原子と結合しているかによって、原子の大きさには大きな影響が及ぶ。すなわち、原子のサイズは結合の方式と相手の種類・数に応じて異なるため、「原子の半径」と言っても一意には定まらない。
水素原子の半径の範囲とその影響要因
たとえば、水素原子が他の原子と化学結合している場合、その相手の性質によって水素原子の半径は異なるとされる。
一般的には、水素原子の半径は0.28Åから0.38Åの範囲にあると概算されており、この数値は周囲の原子との結合状態に応じて変化する。
ここで使用される長さの単位であるオングストローム(Å)は、0.00000001cm(=10⁻⁸cm)に等しい極めて微小な単位である。このように微小なスケールでは、環境変化や化学結合の違いによって、わずかでも大きな差が観測されることになる。
また、結合の様式によっては水素原子の半径は約2.08Åにまでなることもある。これは結合の種類が異なる場合、原子間の距離が伸びる可能性があることを示唆している。
1セント銅貨に含まれる原子数の驚異
読者への注意として強調されているのは、原子がいかに微小な存在であるかという事実である。実際、きわめて微小な存在である原子は、我々の目には見えない。しかし、その微小さは物質の構成単位として計り知れない数を意味する。
たとえば、アメリカの1セント銅貨(約3g)には、約29,000,000,000,000,000,000,000,000個の原子が含まれている。これは2.9×10²⁵個に相当し、日常的な物質に含まれる原子数がいかに膨大であるかを示している。
結語:原子のサイズは状況に依存し、想像を超える数で存在している
このように、原子の大きさは電子の運動や結合環境に大きく依存し、固定的ではない。また、原子は極めて微小であるが、日常生活に存在するごく普通の物体にも、想像を超える数が含まれている。物質の本質を理解するには、こうした原子の性質を深く知ることが不可欠である。