室温における二酸化炭素の溶解度

二酸化炭素(CO₂)の水への溶解度は、地球環境に大きな影響を与える重要な物理化学的性質である。本記事では、室温における二酸化炭素の溶解度の基本的な特性から、海洋酸性化や温暖化との関連について詳しく解説する。



二酸化炭素の溶解度:基本的な性質

室温での溶解度は約0.83 cm³

二酸化炭素の水中への溶解度は室温で約0.83 cm³である。この値は、100 cm³の水に溶ける二酸化炭素の体積を示している。つまり、一定温度・一定圧力下で100 cm³の水が吸収可能なCO₂は約83 cm³となる。溶解度は温度に依存し、温度が上昇するほど低下するという特徴を持つ。

二酸化炭素の溶解と化学反応

CO₂が水に溶けると、一部は以下の化学反応を経て炭酸(H₂CO₃)を形成する。

反応式: CO₂ + H₂O → H₂CO₃

炭酸は不安定で、速やかに以下のような電離を起こす。

電離反応: H₂CO₃ → H⁺ + HCO₃⁻(炭酸水素イオン)
さらに、HCO₃⁻が部分的に分解してCO₃²⁻(炭酸イオン)が生成する。

これらの反応により、溶解したCO₂は水中のpHを低下させ、酸性化が進行する。


海洋酸性化:CO₂の溶解が引き起こす問題

海洋中での反応とその影響

海水中では、CO₂が水と反応して炭酸水素イオン(HCO₃⁻)と炭酸イオン(CO₃²⁻)を生成する。この過程で生じる水素イオン(H⁺)が海水の酸性化を促進する。以下は海水中での主要な化学反応である。

反応式: CO₂ + H₂O + CO₃²⁻ → 2HCO₃⁻

この反応は、炭酸イオンを消費することで、炭酸塩の形成を妨げる。炭酸イオンは、サンゴや貝殻の形成に必要不可欠な物質であり、その減少は海洋生態系に大きな影響を及ぼす。

酸性化の進行とその結果

現在、大気中のCO₂濃度が急速に増加しており、その一部が海洋に吸収されている。これにより、海水のpHが産業革命以前の約8.2から現在は約8.1に低下している。この変化は一見わずかに思えるが、pHスケールは対数スケールであるため、水素イオン濃度は約30%も増加している。

酸性化が進行すると、以下のような問題が生じる:

  • サンゴ礁の白化現象の加速
  • 二枚貝やプランクトンの殻形成阻害
  • 海洋生物の食物連鎖の崩壊

特に、翼足類(画像参照)は酸性化に敏感な生物であり、これらの生物が影響を受けると、生態系全体に波及する恐れがある。


温暖化と二酸化炭素の溶解度の関係

温度上昇と溶解度の低下

二酸化炭素の溶解度は温度が上昇するにつれて低下する。この性質が、地球温暖化におけるフィードバックループを形成する原因となっている。具体的には、以下のようなサイクルが考えられる:

  1. 温暖化により海水温が上昇
  2. 海洋によるCO₂の吸収能力が低下
  3. 大気中のCO₂濃度がさらに上昇
  4. 温暖化が加速する

この正のフィードバックが、温暖化をさらに進行させる要因となる。


練習問題:二酸化炭素の溶解と海洋酸性化

問題1

室温(25℃)で、100 cm³の水に溶解するCO₂の体積は約何cm³か。

解答:
83 cm³。

解説:
文中の情報を利用し、室温でのCO₂の溶解度が0.83 cm³/cm³であることから計算する。


問題2

以下の反応で生成されるイオンはどれか。
CO₂ + H₂O → H₂CO₃ → ?

解答:
H⁺(水素イオン)とHCO₃⁻(炭酸水素イオン)。

解説:
CO₂は水に溶解後、炭酸を形成し、これが電離してH⁺とHCO₃⁻を生成する。


問題3

海洋酸性化が進行すると、海洋生態系にどのような影響が及ぶか。

解答例:
サンゴや貝類の炭酸カルシウム形成が妨げられ、生態系のバランスが崩れる。

解説:
酸性化により炭酸イオンが減少し、石灰質を必要とする生物が影響を受ける。


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