

はじめに:音声録音の新しいスタンダードに出会った
音楽制作や動画編集、時にはフィールドレコーディングも行う筆者にとって、録音機材は「音を撮る」以上の意味を持っています。特にポッドキャストや効果音収録など、簡単かつ確実に使えるハンディレコーダーが欲しい…と感じていた矢先に出会ったのが、ZOOMの「H1essential」でした。
このモデルの最大の特徴は、なんといっても32bitフロート録音に対応しているという点。レベル調整いらずで、録音ミスのリスクがほとんどない──これがどれだけありがたいことか、実際に現場で使ってみて初めてその意味が実感できました。
商品概要:H1シリーズの進化形、H1essentialとは
ZOOMのHシリーズといえば、プロからアマチュアまで幅広く愛用されているハンディレコーダー。その中でも「H1essential」は、エントリーモデルでありながら最新の録音技術をしっかり取り入れた意欲作です。
- 製品名:ZOOM H1essential
- 録音形式:最大32bitフロート WAV
- マイク:XYステレオマイク(最大120dB SPL対応)
- サイズ:約53.9×136.6×29.0mm
- 重量:約90g(電池含まず)
- 接続:USB-C(オーディオインターフェース機能対応)
- 電源:単三電池×2 or USBバスパワー
- カラー展開:ブラック、ホワイト
最初に手に取った時の印象は「とにかく軽い」。ポケットにスッと入るサイズ感で、外でのフィールド録音にもぴったりでした。正直、これで32bit録音ができるというのは驚きでしたね。

特徴を深掘り:現場で感じたH1essentialの強み
■ 32bitフロート録音の安心感
一番実感したのは、録音レベルの不安から完全に解放されたという点。音楽スタジオでアコースティックギターの収録に使った際、サウンドチェック無しのぶっつけ本番でもしっかりとした音が録れていて驚きました。
普通なら、「音が割れないか」「小さすぎないか」と神経を使うところですが、H1essentialなら録音後に自由にレベルを調整できるので、感覚的にはRAW画像を撮るような安心感があります。
しかも、細かくレベル設定をする手間が省けるので、録音そのものに集中できるんですよね。これは作業効率がぐっと上がると感じました。

■ XYステレオマイクの臨場感
マイクは90度配置のXYステレオ方式で、音の定位が非常に自然。部屋の中で喋っている声と、窓から聞こえる雨音の奥行きが綺麗に分離していて、「ああ、これぞステレオ録音」と思わされました。
実際、外で環境音を録る際に使ってみたのですが、目をつぶるとその場の空気まで感じられるようなリアルさがありました。ナチュラルで誇張しすぎない音像、これは映像作品の効果音録りにも十分使えるクオリティだと思います。
■ USBオーディオインターフェース機能が便利すぎる
驚いたのは、H1essentialがそのままUSBマイクとしても使えること。DAWに直接録音する用途でも活躍しましたし、ちょっとしたZoom会議やライブ配信にも即戦力でした。
私の場合、音楽制作時にAbleton Liveと接続してボーカルの仮録りに使ったのですが、**「これ、本当にエントリーモデル?」**と思ってしまうくらい、クリアでヌケの良い音が録れて感動しました。

実際に使って感じたこと:良い点と気になる点
◎ 手軽なのにプロクオリティ。音作りの基盤になる
録音ボタンを押すだけで即収録。これは、普段DTMでコンデンサーマイク+オーディオIFという流れに慣れている自分にとって、ものすごく新鮮でした。機材の準備やレベル設定にかかる時間をほぼゼロにできたので、「音を逃さない」という意味で非常にありがたかったです。
特に、環境音や一発勝負のセッションなど、後戻りのできない録音においては、H1essentialの存在が精神的な安心に直結しました。
音質もクリアで、空気感を拾う能力が高く、軽量でどこにでも持ち運べる。それでいて、後からノーマライズしても音割れしない32bitフロート──これは本当に「持っていて損のない道具」だと実感しました。

△ 気になった点:質感や操作性の細部
一方で、細かい不満がまったくないわけではありません。
- ボディの質感はややチープ。軽量さと引き換えに、見た目はどうしてもプラスチック感が強く、高級感はありません。
- ディスプレイが小さいので、屋外や明るい場所での視認性がやや低め。
- ボタンの操作感は若干カチカチと硬め。グローブをしての操作にはやや不向きでした。
ただし、これらは価格と携帯性を考えればある程度は仕方がない部分でもあります。本質的な性能や音質にはまったく不満はありませんでした。

他製品との比較:H1essentialはどこに位置するのか?
録音機材は「使いどころ」で選ぶべきだと常々思っています。では、H1essentialはどのような立ち位置にあるのでしょうか?手元にある他のZOOM製品とも比較してみました。
● ZOOM H4essentialとの比較
H4essentialは、XLR/TRSコンボ端子を搭載し、外部マイクやライン入力に対応した多機能モデルです。録音トラックも4チャンネルまで対応しているため、ライブレコーディングやマルチ録音に向いている印象です。
対してH1essentialは、あくまでシンプルな2ch録音専用。それでも32bitフロートは共通で搭載しており、手軽さと価格面では断然H1essentialに軍配が上がります。
● ZOOM H6essentialとの比較
プロユースで使われるH6は、マイクカプセルの交換や最大6ch録音が可能という、まさに「録音の要塞」といったスペック。音楽や映像制作の本格派には最高のツールですが、正直、日常のアイディア録りやフィールド録音にはオーバースペックに感じる場面も多いです。
H1essentialは、そういった「ちょうどいい」録音をサクッと行いたい用途にベスト。収録後にPCで編集するスタイルの人にとっては、このシンプルさが逆に最大の強みです。
まとめ:H1essentialは誰におすすめか?
結論から言えば、H1essentialは「録音に失敗したくない人」のための最高の入門機だと感じました。
録音レベルを気にせず、軽量でどこへでも持ち運べて、USBオーディオインターフェースとしても使える。価格も非常に良心的で、これ一台で録音環境が完結するという安心感があります。
✔ こんな方におすすめ
- ポッドキャストやVlogを手軽に始めたい人
- 楽器や歌のアイディアをすぐ録音したい音楽クリエイター
- 屋外での効果音収録やインタビュー録音を行うフィールドレコーダー
- 音響機材の設定が苦手な初心者
逆に、複数トラック録音や外部入力端子が必要な人にはH4/H6の方が適していると思います。用途に応じた選択がポイントですね。
最後に:ガジェットとしての満足感
個人的に、このH1essentialは「買って良かった」と素直に思えるガジェットでした。録音という行為をこんなにも簡単に、そして高品質にしてくれる機材にはなかなか出会えません。
軽い気持ちで導入したのに、使うほどに手放せなくなっていく──そんな機材に久々に出会いました。
音に関わるすべての人に、このコンパクトな相棒を一度試してみてほしいと思います。