3Dプリンターの革新技術:積層造形と光造形法の詳細解説

近年の製造業では、3Dプリンターが革新的な技術として注目を集めている。特に、従来の切削加工や型による成形では難しい中空構造や複雑な形状を製作できる**積層造形(Additive Manufacturing)**の技術がその中心にある。本記事では、積層造形の基本からその応用、特に光造形法に焦点を当てて解説する。


積層造形の基本概念と利点

二次断面に基づく構築方法

積層造形では、製作したい立体物を水平に「輪切り」した形状に従い、粉体や樹脂を薄い層に加工して積み重ねることで立体物を作製する。このプロセスは、デジタル設計データによって正確に制御されるため、以下のような利点がある。

  1. 複雑形状の製作:従来の製造方法では難しい内部構造や中空デザインが可能。
  2. 材料の効率的利用:必要な分だけ材料を使うため、無駄が少ない。
  3. 迅速なプロトタイピング:短期間で設計から試作まで行える。

用いられる素材

積層造形に使用される素材は目的によって多岐にわたる。金属、樹脂、セラミックスなどがあり、粉末状や液体状で供給される。特に光造形法では光硬化性樹脂が主に使用される。


積層造形の種類と加工方法

積層造形を行う方法はさまざまであるが、代表的なものとして以下が挙げられる。

1. レーザー焼結法(SLS)

レーザーを用いて粉末材料を加熱し、部分的に溶融させて固化させる方法。金属やポリマーに対応可能で、強度が求められる部品の製作に適している。

2. インクジェット方式

インクジェットプリンターのように液体材料を精密に噴射し、積層させる方法。複数の素材や色を同時に使用できる点が特徴で、デザイン性の高い製品に適している。

3. 溶融積層造形(FDM)

熱で溶かした樹脂をノズルから押し出して積層する方式。低コストで家庭用3Dプリンターにも広く採用されている。

4. 光造形法(SLA)

光を用いて液状の光硬化性樹脂を硬化させて積層する方法で、以下に詳述する。


光造形法(SLA)の詳細

光造形法の原理

光造形法は、液状の樹脂に光を照射して硬化させる技術である。この方法では、光重合開始剤を含む光硬化性樹脂(モノマーやオリゴマー)を使用する。光重合開始剤は、光照射によって活性種(ラジカルやイオン種)を生成し、樹脂の重合を開始させる。

光照射の方式

光造形法には以下の2つの方式が存在する。

  1. 上方照射方式
    照射光を樹脂表面から照射し、造形物を順次降下させながら硬化層を積層する方式。細かい制御が可能で高精度な立体物を製作できる。
  2. 下方照射方式
    樹脂容器の底面から光を照射し、造形物を引き上げながら硬化層を積層する方式。樹脂の使用量が少なくて済む。

使用される樹脂

光造形法で用いられる光硬化性樹脂には、主に以下の2種類がある。

  • エポキシ系樹脂:高い機械的強度と耐熱性を持つ。
  • アクリル系樹脂:柔軟性と光硬化速度が高い。

練習問題

問題1: 積層造形の主な利点を2つ挙げよ。

解答例: 中空構造や複雑形状の製作が可能であること、材料の無駄を最小限に抑えられること。


問題2: 光造形法に使用される樹脂の例を挙げ、その特徴を述べよ。

解答例:

  • エポキシ系樹脂:耐熱性と機械的強度が高い。
  • アクリル系樹脂:柔軟性があり硬化速度が速い。

問題3: 光造形法の上方照射方式と下方照射方式の違いを説明せよ。

解答例: 上方照射方式は樹脂表面から光を照射し、造形物を降下させる方式であり、精度が高い。下方照射方式は底面から光を照射し、造形物を引き上げる方式で樹脂の消費が少ない。