
プラスチックは軽量で耐衝撃性や電気絶縁性に優れた素材であり、生活、建築、自動車部品など幅広い分野で使用されている。しかし、屋外や日光が当たる環境では、紫外線による劣化が避けられない。ここでは、プラスチックの光劣化のメカニズムと、それを防ぐための紫外線吸収剤および光安定剤について詳しく解説する。
1. プラスチックの光劣化とそのメカニズム
プラスチックが紫外線を吸収すると、光エネルギーによって高分子鎖が活性化され、ラジカル(R•)と呼ばれる不安定な化学種が生成される。これが周囲の酸素と反応することで、過酸化物(ROOH)が生成される。さらに、ROOHが分解すると新たなラジカルが発生し、この反応が連鎖的に進行することで、プラスチックの分子構造が破壊される。このプロセスが「光酸化劣化」と呼ばれ、以下のような影響を及ぼす。
- 強度の低下:プラスチックの分子鎖が切断され、素材の機械的強度が著しく低下する。
- 変色・黄変:酸化によって化学構造が変化し、プラスチックが黄変・退色する。
- 表面のひび割れ:光劣化が進むと、プラスチックの表面に微細なクラックが生じる。

2. 紫外線吸収剤(UV-Absorber)による劣化防止
2-1 紫外線吸収剤の働き
紫外線吸収剤は、紫外線(UV)の光エネルギーを吸収し、それを熱エネルギーなどの無害な形に変換することで、高分子のラジカル生成を抑制する。このメカニズムにより、プラスチックの劣化を大幅に軽減できる。




2-2 主な紫外線吸収剤の種類
紫外線吸収剤としては、以下のような化合物が用いられる。
- ベンゾフェノン系化合物:
- 紫外線を吸収し、エネルギーを熱として放散する。
- 光劣化の原因となる高エネルギーの光を低エネルギーに変換する。
- ベンゾトリアゾール系化合物:
- 高い安定性を持ち、幅広い波長域の紫外線を吸収できる。
- 自動車塗装やプラスチック製品に多く使用される。
- ヒンダードアミン系(HALS):
- 低濃度で高い効果を発揮し、長期間にわたり光安定効果を発揮する。
- 他の吸収剤と併用されることが多い。
3. 光安定剤(Photo-Stabilizer)の役割
紫外線吸収剤が光エネルギーを熱に変換して劣化を防ぐのに対し、光安定剤は主に発生したラジカルを抑制し、酸化分解を防ぐ役割を果たす。
3-1 ラジカル捕捉剤(ヒンダードアミン系光安定剤 HALS)
光安定剤の代表的なものとして、**ヒンダードアミン系光安定剤(HALS, Hindered Amine Light Stabilizer)**がある。これは、プラスチック中に生成されたラジカルを捕捉し、安定な化合物に変換することで劣化を防ぐ。HALSは特にポリオレフィンや塗料に使用されることが多く、紫外線吸収剤と併用されることもある。
3-2 過酸化物分解剤
光酸化によって生じた過酸化物(ROOH)を分解し、不活性な物質に変えることで、ラジカルの生成を抑制する。このタイプの光安定剤は、酸化によるダメージを最小限に抑え、プラスチックの耐久性を向上させる。
4. まとめ:紫外線劣化対策の総合戦略
プラスチックの紫外線劣化を防ぐためには、紫外線吸収剤と光安定剤を組み合わせて使用することが効果的である。具体的には以下の3つの対策が推奨される。
- 紫外線吸収剤の使用:高分子材料が紫外線を直接吸収しないようにする。
- ラジカル捕捉剤(HALS)の導入:発生したラジカルを安定な化合物に変換し、酸化連鎖を防ぐ。
- 過酸化物分解剤の使用:酸化によって生成された過酸化物を分解し、不活性な物質に変える。
