自由回転鎖モデルとは?高分子鎖の構造理解に不可欠な統計的モデル

高分子鎖の物理的性質やその挙動を理解する上で、「自由回転鎖(freely rotating chain)」モデルは不可欠である。

本記事では、自由回転鎖モデルの数理的背景とその意味を、図や数式を交えて詳細に解説する。


自由回転鎖モデルの基礎と意義

分子構造モデルとしての自由回転鎖

高分子鎖の構造を定量的に理解するために、さまざまな理論モデルが存在する。その中でも「自由回転鎖モデル」は、単純な理想連鎖鎖に制限を加えることで、より現実に近い分子挙動を再現する。

図2.4による自由回転鎖の概念図解

図に示される自由回転鎖は、主鎖の炭素結合が固定された結合角θで結ばれており、各結合の回転は自由であることを示している。図中では、結合角θ=109°(すなわち正四面体の中心を占める配置)に基づいた空間配置が描かれており、三つの異なる二面角(0°、120°、−120°)の状態が視覚的に理解できる構成になっている。


数式から読み解く自由回転鎖の性質

結合ベクトルの定義と内積

自由回転鎖における主鎖の各結合ベクトルを bi と定義し、その長さは一定であるとする。このとき、隣り合うベクトル間の角度が常にθであるため、

という内積関係が成り立つ。

任意の2結合間の内積とその一般化

これを2つ離れた結合間に一般化すると、

さらに、距離が離れた複数の結合間でも、

といった形で指数関数的に減衰する相関を記述することが可能となる。

二乗平均末端間距離の導出

これらの内積関係を用いて、鎖の全体的な構造特性である二乗平均末端間距離 ⟨r2⟩ は以下の式で与えられる。

ここで、nは結合数、bは各結合の長さである。この関係式は、単純な自由連結鎖モデルと比較したとき、結合角によって末端距離が増大することを意味している。


結合角θの具体値と実際の鎖長さへの影響

実際の結合角とcosθの値

炭素原子が正四面体構造をとることから、実際の結合角は109°28′である。この角度に対応する余弦値は、

と仮定される。

具体的な二乗平均末端間距離の導出

上記の値を式に代入すると、

となり、これにより平均二乗末端間距離の平方根は、

と求まる。したがって、自由連結鎖モデルと比較して、実際の高分子鎖の末端距離は √2​ 倍大きくなることがわかる。


まとめ:自由回転鎖が示す物理的意味

自由回転鎖モデルは、単なる理想的な仮定ではなく、現実の高分子鎖構造における結合角や分子内回転の影響を明確に捉える理論的枠組みである。このモデルを理解することで、鎖の空間的広がりや構造のゆらぎを定量的に解析することが可能となる。

自由回転鎖の考え方は、高分子物理学における基本中の基本であり、より高度なランダムフライトモデルや回転アイソマー状態モデルなどへの発展的理解の出発点となる。

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