高分子の分子量分布測定法(分別法・超遠心法・GPC法)

はじめに

高分子化合物の性質は、その分子量だけでなく、モノマーの結合様式や立体規則性など多岐にわたる構造的特性に依存する。そのため、高分子を評価する際には、単一の分子量だけでなく、全体としての分子量分布を正確に把握することが極めて重要である。

本記事では、分別法、超遠心法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)の3手法について詳述し、それぞれの原理、手順、利点および注意点を明らかにする。


分子量分布測定法の概要

高分子の分布特性とは

高分子は分子量ばかりでなく、モノマーの結合様式や立体規則性についても分布をもっている。

共重合体では組成やモノマー配列の分布も生じており、これらの分子特性に関し、溶液状態の高分子の溶解性や分子の動き方の差、あるいは担体との相互作用の違いを利用して分子を分ける操作を総称して分別(fractionation)と呼ぶ。

ここでは分子量(分子の大きさ)に関連した分別法について簡単に述べ、分子量分布との関連を概説する。


分別法

相平衡を利用した分別の原理

分別法では、多分散高分子の溶液の温度を下げたり、貧溶媒を加えることにより、相平衡が現れ、高分子濃度が高くて高分子量成分を多く含んだ相(通常は溶媒に富むために上相)と、濃度が低く、低分子量成分を多く含んだ相(上相)に相分離する。

そこで濃厚相を取り除き、そこにまた平衡状態を与えると再び相分離が起きる。この操作を繰り返して元の溶液をいくつかの画分(フラクション)に分けると、これを分子量に基づいた分別沈殿(precipitation fractionation)と呼ぶ。

フラクションの意義と多分散度の解析

この操作により分けられた高分子量成分の画分について、低分子量フラクションの分子量がわかれば、それらの量比から元の高分子の多分散度*8が求められる。

これに対して低分子量フラクションから順に取り出していく方法は分別溶媒法と呼ばれ、そのうちの一つで、カラムにいろいろな大きさのガラスビーズなどの担体をつめてこれに多分散高分子を吸着させる、温度、溶媒組成などの平衡条件を変えることによって低分子量フラクションから溶解し出させる方法をカラム分別法という。

分別効率は前者より高め、試料処理量が少ない割には装置が大がかりになるのが一般的である。

フラクション法の位置付け

これらの方法は分子量分布を求めるというよりも、分子量分布が狭いフラクションを得るための方法としてしばしば用いられる方法である。


超遠心法

高分子溶液における沈降現象

高分子溶液を遠心加速度の場におくと溶質の沈降(または浮上)が起こるが、この現象を利用することで高分子の重量平均分子量Mₚ、z平均分子量M_zおよび分子量分布Mₚ/Mₙを精度よく求めることができる。

超遠心法の利点と課題

超遠心法は分子量分布解析において極めて高精度な手法であるものの、大型市販装置の維持管理がたいへんなことなどのため、近年ではあまり用いられなくなっている。


ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法

GPC法の基本原理

前節でも述べたように、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法は現在高分子の分子量分布を知るのにもっともよく用いられている方法である。

カラム中の高分子が多孔質ゲルを通過する高分子まわりの溶出体積Vₑ(elution volume、時間として観測される)と分子量Mとの間には10⁴<M<10⁶程度の分子量範囲で、経験的にVₑ=A−B log Mの関係がよく成立することが知られている。

測定の実際と計算式

↓図a

図の線を較正直線とよぶが、これを書きだめにはあらかじめ絶対分子量測定法でMₙなりMₚなりを測定しなければならない。

↓図b

実際のクロマトグラムでは図(b)のように高分子溶液の濃度が溶液と溶媒の屈折率の差Δnの形で溶出体積Vₑの関数として表される。これらをうまく計画しておのおののフラクションの相対濃度を求めることによりMₙ、Mₚ、M_zおよびMₚ/Mₙなどが求められる。

GPC法の実用性と制約

ゲルの製造技術の向上と装置開発の努力のおかげで、すでに較正曲線がある高分子溶液の組合せに限れば、未知試料の分子量および分子量分布がきわめて簡単、迅速(30分以内)に精度よく求められる。

しかしあくまで方法としては相対法であり、同じ高分子であっても立体規則性が異なっていたり、分岐構造をもっていると、精度に影響を及ぼす点には留意すべきである。


まとめ

高分子の分子量分布を測定する代表的な手法として、分別法、超遠心法、GPC法の3つを紹介した。それぞれに独自の原理と利点、そして使用上の注意点が存在する。

研究の目的や試料の性質に応じて、これらの手法を適切に選択し、活用することが求められる。分子量分布の正確な理解は、高分子材料の性能を最大限に引き出す上で不可欠であり、今後の高分子研究においても重要な鍵を握る要素となる。

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