マクスウェルモデルにおける応力緩和

マクスウェルモデルの構成と基本原理

マクスウェルモデルは、完全弾性体(弾性率 E を持つばね)と、純粋粘性体(粘性係数 ηE​ を持つダッシュポット)を直列に接続して構成される粘弾性体の代表的なモデルである。

↓図1

図1に示されるように、ばねとダッシュポットは一直線に並び、全体のひずみ ε は各要素のひずみの和 ε=ε12​ で表される。ここで、ε1​ はばねの、ε2​ はダッシュポットのひずみを表す。

ばねとダッシュポットにかかる応力は全体に共通であるため、応力 σ は両者に対して等しく、以下の関係が成立する。


応力緩和現象の導出と数式表現

マクスウェルモデルに対し、時刻 t=0 において一定のひずみ ε を急激に印加した場合、その時点以降のひずみは一定に保たれる(すなわち dε/dt=0)。この条件の下で、モデルにおける応力の時間変化を導出するには、フックとニュートンの法則を合成した次の微分方程式を用いる。

ここで dε/dt=0 を代入して整理すると、応力 σ の時間変化に関する微分方程式が得られる。

この微分方程式を解くと、初期応力 σ0​ から時間 t における応力 σ(t) は以下のような指数関数的減衰として表現される。

ここで、緩和時間 τ は次式により定義される。

この緩和時間は、材料の粘性特性と弾性特性の比率を示す重要な物理量である。


図解による応力緩和の視覚的理解

↓図2

図2は、時間経過とともに応力が指数関数的に減少する様子を示す応力緩和曲線である。

初期応力 σ0 から始まり、時間 t=τ の時点では応力は σ0/eにまで減衰する。

この関係は、指数関数の定義より導かれる自然な帰結であり、緩和時間 τ が応力低下の目安時間としての役割を担っている。

この曲線は、材料において応力が一様に徐々に解消されていく挙動を示しており、粘弾性体の時間依存的な力学応答を象徴的に表現している。

特に高分子材料やバイオマテリアルなど、時間とともに性質が変化する材料設計において、応力緩和曲線の理解は極めて重要である。


まとめと応用の展望

マクスウェルモデルに基づく応力緩和の解析は、材料の粘弾性特性を理解するための基本である。

緩和時間 τ=ηE/E によって特徴づけられる指数関数的な応力減衰は、多くの実用材料において観測される物理現象と一致しており、構造材料の設計、信頼性評価、機械的疲労解析などに応用されている。

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