「高分子」真ひずみと公称ひずみの違いとは?

変形とひずみの基本理解

変形力学における「ひずみ」は、材料が外力を受けて変形した際の元の長さに対する変化の割合を示す無次元量である。

本記事では、その中でも最も基本的な「公称ひずみ(nominal strain)」と「真ひずみ(true strain)」の定義とその意味、関係性について、図や数式を交えて詳述する。

一軸方向への変形におけるひずみの定義

物体が一軸方向に変形する場合、例えば棒状の材料が引張または圧縮を受けると、その長さは l→l+dl のように変化する。このときの変化量 dl を用いて、ひずみの瞬間的な増分を以下のように定義する。

ひずみの微分形:瞬間的ひずみの定義

増分を基にした瞬間的なひずみは、次の2つの形で表現される。

  • 公称ひずみの微小形
  • 真ひずみの微小形

ここで、l0 は変形前の元の長さ、l は変形後の長さである。

微小ひずみの積分による総ひずみの導出

上記の微分式を積分することにより、全体としてのひずみが以下のように定式化される。

  • 公称ひずみ
  • 真ひずみ

このとき、前者を公称ひずみ(nominal strain)、後者を真ひずみ(true strain)と呼ぶ。

数式 は、それぞれの定義を数学的に示したものである。

公称ひずみと真ひずみの関係と使い分け

公称ひずみは全体の伸びを元の長さで割るという簡便な定義であり、特に変形が小さい場合には解析や計測が容易である。

一方、真ひずみは変形の進行に伴う長さの変化を常に考慮した定義であり、より実態に即した指標である。

特に変形量が30%以下のような範囲では、公称ひずみと真ひずみの値はほとんど一致するとして差異を無視することが多い。

しかし、高分子材料など大変形を伴う場面では、真ひずみの使用が推奨される。

ひずみの単位と表示方法

ひずみは無次元量であるが、材料工学などの実用分野においては、わかりやすさのために百分率(%)で表現されることが一般的である。

例えば、式 に100を掛けて表示することで、視覚的に変形量の大小が把握しやすくなる。

まとめ:変形解析におけるひずみ概念の重要性

ひずみの定義は、材料がどのように変形するかを正確に把握するための第一歩であり、真ひずみと公称ひずみの区別は設計・解析の精度に大きく関与する。

微小変形においては公称ひずみを、大変形においては真ひずみを採用することで、現象をより正確にモデル化することが可能となる。図のように両者の関係を可視化することで、使用場面に応じた適切な選択が促される。

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