
万有引力の法則とその意味
物体同士にはたらく基本的な力の一つに万有引力がある。これは、質量を持つすべての物体間に作用する引力であり、距離に依存して変化する。具体的には、質量 M の天体と、質量 m の物体の間にはたらく万有引力は、以下の式で表される。

この式における符号「−」は、万有引力が常に引力であり、両物体を互いに引き寄せる方向にはたらくことを示している。
万有引力定数 G の定義と値
万有引力の大きさを定める定数 G(万有引力定数)は、以下の値で与えられる。

この定数は実験によって測定されるものであり、ニュートン力学の中で極めて重要な役割を果たしている。
万有引力における位置エネルギーの導出
無限遠を基準としたポテンシャルエネルギーの定義
物理学では、二物体が無限に離れているときの位置エネルギーをゼロとして、任意の距離 r における位置エネルギー V(r) を以下のように定義する。

この積分を評価すると、次の結果が得られる。

すなわち、位置エネルギーそのものは次のようになる。

この式により、物体間の距離が近づくほど位置エネルギーはより大きな負の値をとることがわかる。これは、物体がより強く引き寄せ合う状況を意味している。
積分公式の補足
この導出に用いられた積分は、指数 n=−2 の場合の以下の公式に基づく。

エネルギー保存則とその応用
運動エネルギーと位置エネルギーの保存
力学的エネルギー保存則によれば、万有引力下で運動する物体の運動エネルギーと位置エネルギーの和は常に一定に保たれる。すなわち、次のように表される。

ここで:
- vA,vB:それぞれ地点 A、B における物体の速度
- rA,rB:それぞれ地点 A、B における物体と中心天体の距離
この保存則を利用すれば、たとえば物体を地上からある高さに打ち上げた際の最大到達点の速度や、惑星の軌道上での速度変化などを理論的に導出することができる。
まとめと今後の展望
本記事では、万有引力による位置エネルギーの基本式、導出方法、そしてエネルギー保存則との関係について網羅的に解説した。
- 万有引力は距離の2乗に反比例し、常に引力として働く。
- 位置エネルギーは無限遠を基準とし、負の値で表される。
- 力学的エネルギー保存則は、運動と引力場の関係を理解するための鍵である。
これらの概念は、惑星運動の解析や人工衛星の軌道設計に応用される。また、より高度な重力理論(一般相対性理論など)を学ぶ前提知識としても極めて重要である。
