
パラメトリック励振の基本モデル
子供が立ちこぎでブランコをこぐ動作を観察すると、体を上下に動かすことでブランコの揺れを増幅していることが分かる。この動きは、ブランコの有効長さ l を時間的に変化させることに等しい。このとき、ブランコの長さは以下の式で表される。
(式1) ブランコの時間依存長さ

ここで h≪1 を仮定する。
運動方程式の導出
ブランコの運動を記述するため、まず角運動量 LLL は以下の式で表される。
(式2) 角運動量の定義

力のモーメント N(θ) は次のように表される。
(式3) モーメントの表式

この二式を用いて運動方程式を導くと以下の式が得られる。
(式4) 運動方程式(角運動量微分)

ここで微小振動 θ≪1 を仮定し、時間微分を展開・整理する。
時間依存系の運動方程式
展開の結果、次の二階微分方程式が導かれる。
(式5) 調和振動子型運動方程式

ここで以下の関数が定義される。
(式6) 時間依存角振動数

(式7) 減衰係数

さらに変数変換 y(t)=l(t)θ(t) を導入すると、式(5)は以下の形に変換される。
(式8) 変数変換後の運動方程式

このとき有効角振動数 Ω2(t) は次のように表される。
(式9) 有効角振動数

ここで
とする。
共鳴条件と運動解
共鳴条件 ω=2ω0 のとき、初期条件 θ(0)=θ0、θ˙(0)=0 の下で、運動の解は以下の式で表される。
(式10) 共鳴状態の運動解

この解により、時間経過に伴い角度が指数関数的に増加することが示される。
力学的エネルギーの増加
運動に対応する力学的エネルギー E0(t) は以下の式で与えられる。
(式11) 力学的エネルギー

この式からも、時間に伴うエネルギーの指数的増加が確認される。

直感的解釈と特徴
子供が立ちこぎでブランコをこぐとき、ブランコの最前方・最後方で立ち上がり、中央でしゃがむ動きを繰り返す。これはブランコの角振動数の2倍に相当する角振動数で上下運動していることに一致する。
すなわち、子供は無意識のうちに共鳴条件を満たし、パラメトリック励振によって振幅を効率的に増幅している。
パラメトリック励振の重要性
通常の強制振動と異なり、パラメトリック励振ではエネルギーの注入が指数関数的である。また共鳴条件が「外力の角振動数が系の固有角振動数の2倍」である点が特徴的である。
さらに、初期条件として θ=0、θ˙=0 を与えると、振動は発生しない。これは適切なタイミングと動作が振動開始の鍵であることを示している。
まとめ
本稿では立ちこぎブランコの運動を物理的にモデル化し、パラメトリック励振の数理的側面を詳述した。
日常の体感運動が実際には高度な物理法則に基づくことを明らかにし、同時に工学的応用への可能性も示唆した。
