
1. 構造色とは何か?
一般的な色は、物質が特定の波長の光を吸収し、残りの光を反射することで生じる。しかし、構造色は色素を含まず、物質内部の微細な構造が光を干渉・回折・散乱させることで特定の色を呈する。この現象は、波長に匹敵する周期的な構造を持つ物質で発生し、ブラッグの法則(Bragg’s law) に基づいて説明される。
ブラッグの条件

- d:構造の周期的な間隔
- θ:入射角
- λ:反射される光の波長
- n:整数(回折の次数)
この条件を満たす光のみが強く反射されるため、物質の微細構造によって特定の色が現れる。
2. 自然界における構造色
2.1 昆虫・鳥類・魚類の構造色
多くの生物が構造色を持ち、美しい色彩を発する。代表的な例として、以下のものが挙げられる。
- 昆虫類:モルフォ蝶、オオゴマダラ、ハナカミキリなど
- 鳥類:クジャクの羽、カワセミの青い羽
- 魚類:カレイやタツノオトシゴの光沢のある体表
例えば、モルフォ蝶 は鱗粉の微細構造により、光を特定の波長で反射し鮮やかな青色を呈する(図参照)。また、クジャクの羽の美しい輝きも、微細構造による光の干渉によって生じる。

2.2 自然現象としての構造色
虹や夕焼けのような自然現象も、構造色の一種とされる。空気中の水滴や塵による光の散乱と干渉が特定の色を作り出す。
3. 構造色を応用した工業技術
3.1 モルフォテックス®(構造発色繊維)
モルフォテックス® は、ポリエステルとナイロンの微細な多層構造によって特定の波長の光を反射する繊維である。従来の染料を使わず、物理的構造のみで青・赤・緑・紫などの色を作り出す。
この技術は自動車、衣類、電子機器の装飾など幅広く利用されている。
3.2 デフォーロン®(構造発色顔料)
モルフォテックスの繊維を粉末状にし、塗料や化粧品、印刷インクに応用したもの。色褪せない特性を持つため、高耐久性のある発色材として注目される。
3.3 チタンクローム(酸化被膜による構造発色)
中野科学が開発した酸化膜技術を利用し、ステンレスやチタンの表面にナノレベルの酸化膜を形成することで、角度によって色が変化する効果を生む。高級時計や建築材料に応用されている。
3.4 構造色化粧品
化粧品にも構造色技術が応用されており、例えば酸化チタン被膜で覆った微細な雲母を使用することで、肌の色調を整えるファンデーションなどが開発されている。
4. まとめ
構造色は、微細な周期構造によって特定の波長の光を選択的に反射し、美しい色彩を生み出す。この原理は自然界だけでなく、繊維、塗料、化粧品、電子機器、建築材など幅広い分野で応用されている。

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