![放射線:基礎知識とその影響](https://i0.wp.com/entropy.jp/wp-content/uploads/2024/07/エントロピー-93-3.jpg?fit=640%2C400&ssl=1)
放射線は、電磁波と高エネルギー粒子線に大別され、それぞれが物質に対して異なる相互作用を示す。
この記事では、放射線の種類、物質との相互作用、線質効果、さらにイオン化のメカニズムについて詳しく解説する。
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1. 放射線の種類
1.1 電磁波としての放射線
放射線の中でも電磁波に分類されるものには、X線やγ線がある。これらは電磁波の一種であり、光と同様の性質を持つが、波長が極めて短く、エネルギーが高い点が特徴である。
1.2 粒子線としての放射線
高エネルギーの粒子線には以下のようなものがある。
- α線(アルファ線): ヘリウム原子核(陽子2個・中性子2個)からなる高エネルギー粒子。
- β線(ベータ線): 電子または陽電子を放出する放射線。
- 中性子線: 電荷を持たない中性子が放出されることで生じる放射線。
- 陽子線: 高速で運動する陽子が放射されるもの。
2. 放射線と物質の相互作用
放射線が物質と相互作用する際、主に以下の3つの現象が発生する。
2.1 光電効果
高エネルギーのX線やγ線が物質に衝突すると、そのエネルギーを吸収した電子が原子から放出される。これを光電効果と呼ぶ。この現象は低エネルギーのX線・γ線で特に顕著である。
2.2 コンプトン散乱
中程度のエネルギーを持つX線やγ線は、物質中の電子と衝突し、一部のエネルギーを電子に渡して散乱される。これをコンプトン散乱といい、放射線の進行方向が変化するため、透過率が低下する。
2.3 電子対生成
放射線のエネルギーが1.02 MeV以上になると、電子と陽電子のペアが生成される。この現象を電子対生成と呼び、陽電子はすぐに周囲の電子と結合して消滅し、2つのγ線(0.511 MeV)が発生する。
3. 放射線の線質効果
3.1 直接電離と間接電離
放射線が物質を電離するメカニズムには直接電離と間接電離の2種類がある。
- 直接電離放射線: α線やβ線のように、電荷を持つ粒子が直接電子をはじき飛ばし、物質を電離する。
- 間接電離放射線: X線やγ線のように、電磁波として物質に入り、その後光電効果やコンプトン散乱を介して電子を放出し、間接的に電離を引き起こす。
3.2 スパーとイオン対の生成
放射線が物質に入ると、局所的に高エネルギーを持つ電子が発生し、周囲の分子を電離させる。この際、電子と正イオンのペア(イオン対)が形成される。また、分子が励起状態になり、その後反応して新たな化学種(スパー)を生成する。
4. イオンと電子の役割
4.1 イオン対とホールの形成
生成された正イオンは、周囲の分子から電子を奪うことで安定化し、物質中を移動する。これに対し、電子を失った分子は**ホール(空孔)**となり、別の電子を受け取ることで安定化する。この過程が繰り返されることで、電荷の移動が進む。
4.2 放射線の影響と物質の変化
放射線によるイオン化の影響は、物質ごとに異なる。例えば、水が放射線を受けると、以下のような反応が進行する。
- 水分子の電離
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- ラジカルの生成
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このように、放射線が物質と相互作用すると、化学的に活性なラジカルが生成され、さらに物質の構造変化を引き起こす可能性がある。
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