熱力学第1法則に基づくエネルギー保存則の導出

熱力学第1法則に基づく流体エネルギーの収支

流体領域Δx(t)における全エネルギーの時間変化は、熱力学第1法則に従い、以下のように記述される。

右辺の第1項は外力Fによる単位時間当たりの外部からのエネルギー供給であり、第2項および第3項は、それぞれの端点での圧力仕事および熱流束によるエネルギーの流出入を表す。


積分形から微分形への変換

式(1)を任意領域に対して一般化し、積分形から微分形へと変換すると、以下の局所形式が得られる。

これはエネルギー密度の時間変化とエネルギーフラックスの発散、外力によるエネルギー供給のバランスを示す基本式である。

(1)から(2)への式変形過程

領域Δx(t)が時間的に移動するため、微分の扱いには**ライプニッツ則(移動領域での積分の時間微分公式)**を用いる。

一般に、

を用いる。この形式で、f(x,t)=1/2ρv2+ρe、境界速度がそれぞれ v(b,t),v(a,t) であることに注意すれば、

左辺は以下のように変形できる

右辺の表現を統一して整理

と書くことができる。境界から出ていく方向に符号をつける。

全体をまとめて微分形に変換

式(1)の差分形式(境界の変化)を、空間微分(発散項)に変換することで、以下のような局所形式(微分形)が得られる。


運動エネルギー密度の時間変化

運動エネルギー密度に着目すると、以下の関係が導かれる。

この式は、速度場v(x,t)の変動に伴う運動エネルギーの変化と、体積仕事や外力との関連を記述する。

(2)から(3)への式変形過程

式(2)の両辺から内部エネルギー項(ρeに関する項)を除去し、運動エネルギーに関する項のみ取り出す。

  • 式(2)左辺のρv(½v² + e)のうち、eに関する項を捨てて、½ρv²に関する輸送項だけを残す。
  • 式(2)右辺の−∂ₓ(vP)のうち、圧力の寄与をP∂ₓvとして整理(積の微分展開)。
  • 熱流束jqは、運動エネルギーには寄与しないため無視。


内部エネルギーの保存則の導出

式(2)から式(3)を減算することにより、内部エネルギー密度の時間変化を表す以下の式が導出される。


ここでは、左辺が内部エネルギーおよびそのフラックスの時間変化を、右辺が圧力勾配による体積変形のエネルギー変換を表す。

式(4)の導出過程

式(2) − 式(3) を計算

左辺の整理

右辺の整理

この結果が、内部エネルギー密度の時間変化を表す式(4)である。


ポテンシャルエネルギーを含むエネルギー保存式

外力ポテンシャルエネルギーφが時間に依存しない(∂φ/∂t = 0)と仮定すると、全エネルギー密度ρeₜₒₜ(eₜₒₜ = e + φ)は保存され、以下の式で記述される。

これは閉鎖系におけるエネルギー保存を示しており、jₑは全エネルギーの流束密度を表す。

式4から式5を導出する過程

ポテンシャルエネルギー φ を考慮し、全エネルギー密度を

と定義する。ここで φ は時間に依存しない(∂φ/∂t = 0)とする。

したがって、以下の式が成り立つ

質量保存式より

したがって

また、全エネルギーフラックスは以下で定義される

式(4)に φ に関する項を加えると

に対し、φ を用いた項を加えると

右辺を整理すると

これを式全体に代入し整理すると

すなわち


まとめ

本稿では、熱力学第1法則に基づき、流体のエネルギー保存則を体系的に導出した。特に式(4)は、内部エネルギーの時間発展を明示的に示すものであり、熱・力学的エネルギーの変換を定量的に解析する上で極めて重要な関係式である。

また、式(5)は全エネルギーが保存されることを強調しており、流体システムのエネルギー解析における基本的な基盤を提供する。

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