
ワイゼンベルグ効果とは何か?
ワイゼンベルグ効果とは、特定の流体が外力により直感に反する運動を示す現象であり、特に非ニュートン流体において顕著に観察される。この効果は、K. Weisenberg によって科学的に明らかにされたもので、今日ではその名を冠して呼ばれている。
たとえば、家庭においてもかつてはよく見られた、すった長いモ(山かけのイモの部分)を棒でかき混ぜようとすると、イモが棒にまとわりつき、表面をはいつくばるように上昇してくる現象は、このワイゼンベルグ効果の一例である。
現在では家庭で目にすることは少なくなったが、実業界、特に工場などではこの現象は広く知られており、現場技術者たちをしばしば悩ませてきた。
法線応力とワイゼンベルグ効果の関係
法線応力とは何か?
法線応力とは、剪断応力とは異なり、物体表面に垂直な方向に作用する応力である。流体の運動が回転やずり変形を伴うとき、流体内部には単純な粘性抵抗だけでは説明できない応力が発生することがある。
このような応力のうち、流体の回転軸方向や剪断面に対して垂直方向に働くものが法線応力であり、ワイゼンベルグ効果はこの法線応力によって引き起こされる。
ワイゼンベルグ効果のモデルによる説明
ワイゼンベルグ効果を理解するためには、以下のようなモデルを用いると分かりやすい。
同軸二重円筒モデル(図a)

二重円筒の内筒と外筒の間に流体を満たし、内筒を回転させる。回転によって流体に剪断が加わるが、このとき、流体は単に周方向に流れるだけでなく、法線方向、すなわち内筒に向かって移動し始める。
この運動は、粘性流体では観察されないものであり、非ニュートン流体特有の現象である。これは、回転軸のまわりの円形の張力と法線応力が複合的に作用して、流体を内側に締めつけるためである。
平行円板モデル(図b)

上下に配置された円盤のうち、一方を回転させて流体に剪断を与える。ここでも同様に、流体が内側に向かって盛り上がる現象が観察される。
剪断応力とともに生じる法線応力の効果である。
ずり変形モデル(図c)

上下の平板の間に流体を満たし、上の平板を水平方向に動かす。これによりずり変形が生じるが、ワイゼンベルグ効果によって流体が変形方向と直交する方向にも変位する場合がある。
ワイゼンベルグの業績とその応用
ワイゼンベルグは、上記の法線応力効果を理解するためだけでなく、これを測定するための装置も開発した。
その代表例が「ワイゼンベルグレオメーター」であり、これを用いることで高分子液体の非線形粘弾性の測定が可能になった。特に高分子材料におけるレオロジー的特性の解明において、大きな貢献を果たしたのである。
工業的な意義と未来の応用
このような非ニュートン流体の挙動は、食品加工、化粧品製造、高分子材料の成形工程など、さまざまな産業分野で重要な意味を持つ。ワイゼンベルグ効果の正確な理解と制御は、製品品質の安定性や生産効率の向上に直結する。
今後は、マイクロフルイディクスやバイオ材料分野においても、法線応力やワイゼンベルグ効果を利用した新技術の開発が期待されている。
まとめ
ワイゼンベルグ効果は、一見すると直感に反する非ニュートン流体の振る舞いを説明する重要な現象である。
