表面張力は、液体が表面を小さく保とうとする力である。水滴が丸くなる現象や、蓮の葉の上で水が丸まる様子からも、この力が働いていることが観察できる。このセクションでは、表面張力の根本的な起源について、凝縮相の構成と分子間の相互作用に基づいて解説する。
凝縮相の安定化エネルギーと分子間引力
凝縮相とは?
凝縮相は、物質が液体や固体として存在する状態である。この相において、分子や原子は互いに強い引力で結びつき、バラバラに分散することなく集合している。気体とは異なり、液体や固体では分子間の引力が熱運動に打ち勝っているため、このような安定した構造が維持されている。
凝集エネルギーとは?
凝縮相の分子が互いに引き合う力によって安定化されるエネルギーが「凝集エネルギー」と呼ばれる。例えば、孤立した水分子が真空から水中に移動した場合、水分子は周囲の分子と水素結合を形成し、エネルギー的に安定する。水分子の場合、最大4つの水素結合を結ぶことができるため、これによって安定化が促進される。このように、水素結合やvan der Waals力などの分子間力が働くことで、分子は凝縮相で安定化するのである。
表面における分子の不安定性と過剰自由エネルギー
表面に存在する分子のエネルギー
液体の内部(バルク)にある分子は、周囲の分子と全方向にわたって相互作用するため、安定した状態にある。しかし、表面に位置する分子には外側(空気または蒸気)に相互作用する分子が存在しない。
たとえば、水の表面にいる水分子は、外側には水素結合を形成できないため、内部の分子よりもエネルギーが高く、不安定である。この状態は、分子が表面にいるが故に持つ「過剰な自由エネルギー」として表現される。
過剰自由エネルギーと表面張力の関係
表面の分子が持つ過剰自由エネルギーを単位表面積あたりで表したものが表面張力である。液体は、この過剰自由エネルギーを低減しようとして、できる限り表面積を縮小しようとする傾向がある。水滴や水銀の球状化は、球形が最も小さな表面積であることから生じる現象である。
表面張力の作用と液体の形状
水滴や水銀の球状化
水滴が球形を形成するのは、表面張力が液体の表面積を最小限に抑えようとするためである。球形は同一体積において表面積が最も小さく、結果として液体が安定した形状をとる。蓮の葉の上で水滴が丸くなるのも、この表面張力によって生じる。
表面張力の物理的な意味
表面張力は単なる液体の形状を支配するだけでなく、液体の性質や挙動に大きく影響する。例えば、表面張力が高い液体は、薄い管内で上昇する毛細管現象や液体の浸透性など、日常的な観察にも影響を与える。このように、表面張力は液体の構造と性質を理解する上での基本的な概念である。
練習問題
問題1:凝集エネルギーとは何か?
解答と解説:凝集エネルギーは、凝縮相(液体や固体)において、分子や原子が周囲の分子や原子と引き合うことで安定化されるエネルギーである。例えば、水分子が水中にあるとき、周囲の水分子と水素結合を結ぶことで安定化される。このような安定化のエネルギーが凝集エネルギーである。
問題2:表面に位置する分子が持つ「過剰自由エネルギー」とは何か?
解答と解説:表面に位置する分子は、外側に相互作用する分子が存在しないため、内部の分子と比較してエネルギー的に不安定である。このために持つ余分な自由エネルギーが「過剰自由エネルギー」と呼ばれる。このエネルギーは、分子が表面にあることによって発生し、液体が表面積を小さくするように働く原因となる。
問題3:なぜ水滴は球形になるのか?また、その理由を表面張力との関係から説明せよ。
解答と解説:水滴が球形になるのは、表面張力が液体の表面積を最小限に抑えようとするためである。同一体積で表面積を最も小さくする形状が球であるため、液体は球状をとる。表面張力が働くことで、液体の表面積が小さくなり、安定な形状である球が形成される。