
理想気体のエントロピー導出の基礎
エントロピーの定義と式の展開
式①:エントロピーの基本式
まず、式(37)を式(24)に代入し、さらに式(36)を用いることで、エントロピーは以下のように表される。

この式はエントロピーを離散状態での分布関数f_lを用いて定義したものであり、統計力学におけるエントロピーの出発点を成す。
式②:積分表示への変換
上記の和を連続な速度空間での積分に変換すると、次のようになる。

この式は速度分布f(|v|)に基づくエントロピーの連続表示であり、マクスウェル分布などの速度分布に基づく解析を可能にする。
式③:具体的なエントロピーの表現
分布関数としてマクスウェル・ボルツマン分布を代入し積分を実行することで、以下のような明示的なエントロピー式が導出される。

この式は理想気体のエントロピーが温度T、体積V、粒子数Nの関数であることを示す一般形である。
理想気体エントロピー式の物理的意味
温度・体積・粒子数との関係
式の意味するもの
導出された式③において、各項は物理的に明確な意味を持つ。
- ln(V / N):粒子密度の逆数に対応し、空間的な配置の自由度を反映する。
- (3/2) ln(k_B T):粒子の運動エネルギーに由来し、温度との関係を示す。
- ln((m h² / 2π)^(3/2)):量子力学的スケールを反映し、熱力学的極限における基準項となる。
これらの項が集まってエントロピーの総和を構成し、理想気体におけるミクロとマクロの架橋を実現している。
式②の積分の重要性
式②で与えられた積分形式は、速度分布に対するエントロピーの定義そのものであり、統計力学の基本構造に根ざしている。この積分を具体的に確認することは、式③の信頼性を担保する意味でも重要である。
理想気体エントロピー理解のための補足事項
マクスウェル・ボルツマン分布の役割
圧力計算との関連
エントロピーの導出に続く物理的意味の検証として、マクスウェル・ボルツマン分布を用いて理想気体の圧力を計算する作業は有意義である。これにより、エントロピーと他の熱力学量との整合性が検証可能となる。
今後の展開
次節以降では、マクスウェル・ボルツマン分布に基づいて気体の圧力を具体的に計算し、理想気体における状態方程式との関係を確認する。これにより、統計力学の枠組みがマクロスケールの物理現象とどのように一致するかが明確になる。
