
骨伝導の技術の応用がすごい

docodemoスピーカー(以降 “本機”)の最大のウリは「骨伝導デバイスを用いて、振動を物体に伝えてその物体をスピーカー化する」点にあります。空気を通じて音を伝える通常のスピーカーとは全く異なる原理です。
Boco社の説明によれば、直径52mm の骨伝導用デバイスを搭載し、再生帯域 4 Hz~40,000 Hz を目指す、かなり広帯域な設計としています。
この方式のおかげで、机、椅子、箱、窓、壁など、“物体”を共振させることで音が拡散します。つまり、「スピーカーを置く」という概念を越えて、「置いた対象そのものがスピーカーになる」感覚が得られるわけです。振動を“媒介”として音を広げるアプローチは、使いどころによって驚きがありました。
ただし、“骨伝導”という言葉だけ聞くと、骨伝導イヤホンと混同されがちですが、こちらは「空気を通る音」を発するわけではなく、振動を物体に伝えて物体を音響源にさせる方式なので、体感としてはまったく異なる使用感です。

本当にどこでも音が鳴る

実際に使ってみると、「意外な場所がスピーカーになる」体験がかなり楽しめます。例えば、下記のようなものに本機を当ててみました:
- リビングの木製テーブル
- 段ボール箱
- 窓ガラス(サッシ含む)
- 家具(引き出しの面など)
- 壁面(注意を払って手で支えて)
これらすべてで「音が聞こえる」ことを確認しました。もちろん、音の響き方・音質は対象物によって大きく変わりますが、「どこでも鳴る」基本的な性能は確かに成立している、という印象です。
たとえば木のテーブルでは、比較的自然な音の広がりを感じられ、机の面積が大きいと低音の伸びも感じられることがありました。壁やガラスに貼り付けるように使う方法も可能ですが、落下リスクを避けるため「手を添える」運用が説明書上は推奨されています。
ただし、すべての場所で「十分な音量・音質」が得られるわけではなく、やはり“振動が伝わりやすい素材・構造”であることが前提になります。
ものによって音が違う
本機を使って一番面白いと感じたのは、「同じ音源でも、対象物を変えるだけで音の印象がガラリと変わる」点です。以下は私なりに観察した傾向です:
対象物 | 音の特徴・傾向 |
---|---|
薄めの木製テーブル | 比較的バランスがよく、低域・高域ともあって聞きやすい |
厚めの板・合板 | 低音がこもりがち、また高音がやや減衰しやすい |
段ボール(軽量箱) | 中高域がはっきり出やすく、柔らかい音に感じることが多い |
窓ガラス(ガラス+サッシ) | 切れのある音、高域のシャープ感が出ることがある |
壁(石膏ボードなど) | 音量感は出やすいが、低域の抜けが弱くなることもあり |
このように、用途や好みで「どの物体をスピーカーにするか」を選ぶのが本機の楽しみ方の一つだと思います。おそらく、振動を伝える“表面積・剛性・薄さ・平坦さ”などが、その変化を生む要因でしょう。
驚いたのは、意外な “段ボール箱” が響きがよかったケースもあったことです(後述します)。また、逆に金属板や厚いコンクリート面などでは音が小さくなる、という注意点も説明書に記載されています。
このように、「どこでどう鳴らすか」が、音の印象を大きく左右するという点が、本機ならではの奥深さだと感じました。
ダンボールが意外といい
実験的に、軽めの段ボール箱(例えば郵便用の箱)を用意し、その側面に本機を貼り付けて(ガムテープまたは粘着素材で軽く固定)音楽を鳴らしてみたところ、予想外に“軽やかで中高域の抜けが良い音”が出ることがありました。
感覚的な印象としては、「音が軽く跳ねるような」感じで、過度に低音が出すぎないぶん、声やアコースティック楽器、伴奏付きの楽曲などが明瞭に聞こえやすいという印象が残りました。
ただし、段ボールは剛性が低く、強い低音を与えると歪みが出たり、箱そのものがブレたりすることもありました。そのため、ある程度控えめな音量設定で使うのが安全でしょう。また、箱の形(正方形・長方形など)や厚み、内部の空洞構造なども音の出方に大きく影響します。
この「意外な素材が良いスピーカーになる」感覚は、docodemoスピーカーの魅力を際立たせる体験だと思います。
窓ガラスもすごい
もう一つ印象的だったのが、窓ガラス(サッシ込み) への貼付使用です。実験的に、窓枠内ガラス面に本機を貼り付けて音を鳴らしてみると、非常にシャープでクリアな音を感じられました。特に高域の伸びが印象的です。
その際、次の点に注意しました:
- 結露や湿気でガラスが濡れていない状態を選ぶ
- ガラス+サッシ混合材(アルミサッシなど)だと振動の伝わり方が複雑になる
- 強い振動(低音重視)では割れやすさや共振ノイズに注意
うまく使えば、窓ガラス自体が“透明スピーカー”のように振る舞う感覚は、非常に近未来的でワクワクしました。ただし、ガラス面が大きすぎたり、ガラスの厚み・強化ガラスなどの特性が異なるタイプでは期待した音にならないこともありました。
また、窓ガラスに貼ったまま開閉やガラス掃除をする際の取り扱いリスク(落下や振動ストレス)があるため、常設用途には慎重な取り付け方法が必要と思われます。

少し重い

スペック表によると、本機の重量は約 360 g です。
実際に持って使う場面では、「重さが意外と感じられる」印象もあります。手で貼り付けて使用する場面では、長時間保持すると腕が疲れることも。特に壁面や垂直面に取り付けて使う場合はしっかり支えが必要で、「手を添えておく」運用が安全という注意書きも公式であります。
ただし、360 g はスマートフォンやタブレットと比べても重いというほどではなく、扱えない重さではありません。むしろ、「重さを感じさせない扱いやすさ」と「十分な振動伝達性能」のバランスを取った設計と見ることもできます。
充電はマイクロUSB、有線接続も可能
実際に充電および接続方法も確認してみました。
充電:マイクロUSB

充電時間は約 3 時間。
充電端子は マイクロUSB を採用しており、スマートフォン充電用の一般的なケーブル(マイクロUSB)を流用できる点は利便性があります。ただ、最近は USB-C が主流になりつつあるため、将来的にケーブル世代との整合性を考えるユーザーは気になるところかもしれません。
公式スペックでは、連続使用時間は約 7 時間。
実際に連続音楽再生をしてみたところ、音量を中くらいに設定した状態で 5〜6 時間程度は利用できそうな印象でした(環境・振動負荷によって前後すると思われます)。
有線接続(Line-in)対応
Bluetooth 接続のほか、3.5 mm ステレオミニジャックによる有線入力(AUDIO IN) にも対応しています。
これにより、テレビ、ラジオ、デスクトップPCなど、Bluetooth非対応機器とも接続できる点は実用性が高いと感じました。有線接続時は電池を使わずに直接動作可能なので、長時間の視聴用途にも適します。
ただし、有線入力時でも「振動 → 対象物 → 音響化」という骨伝導の原理は変わらないので、接続方式だけで劇的な音質向上が得られるわけではありません。
重低音を響かせるには場所選びがシビア
本機のスペックでは「100W級ホームオーディオと遜色ない重低音サウンドを実現」などと言われています。
しかし実使用では、「重低音をしっかり感じられるかどうか」は設置対象物やその剛性・形・共振特性に大きく依存します。例えば、軽薄な板や箱では低音がブレたりこもったりしてしまい、すっきりとした低域を出すには限界があります。
重低音を楽しみたい場合、次のようなポイントを意識する必要がありました:
- 剛性がある広い面材
厚めの板材、金属板、厚手の木材などを使うと、振動をしっかり支えて“低域の揺らぎ”を抑えられることがある。 - 支え構造の一体性
面材がしっかり固定されて揺れないようにする、たわみや浮きが少ない材を使う。 - 共振点を避ける
対象材自身の共振周波数が低音域と重なるとブーミーになったり、逆に低音が打ち消されてしまうことがある。 - 密着度・固定方法
本機と対象物の接触をしっかりさせ、隙間や浮きがないようにすることで振動損失を抑える。 - 音量の設定
低音を追うあまり過度な振動を与えると、対象物が歪む・ビビる・音が崩れるので、ほどほどの音量で質を重視する方が実用性は高い。
こうした調整を丁寧に行えば、比較的厚手の木板や金属板では「しっかりとした低音の感触」が得られることもあります。ただし、“どこでも重低音”というわけではなく、「場所と素材を選ぶ必要性」は意識しておいた方がよいです。
総評・おすすめシーン
docodemoスピーカーは、「スピーカーという概念を物体に拡張する」ことを真剣に追求したユニークな製品であり、使い方次第で発見が豊かなガジェットだと感じました。
強み
- 骨伝導技術を応用して、あらゆる物体をスピーカー化する発想力
- Bluetooth+有線の両対応で汎用性が高い
- 手のひらサイズながら音を出せる自由度
- 素材・設置場所次第で音のキャラクターを変えられる楽しさ
- 窓ガラス、段ボールなど意外な素材で良い響きを見つけられる可能性
注意点・改善してほしい点
- 重量感があり、垂直面などに貼る場合は支えが必要
- 低音再現には素材選定・設置条件のチューニングがシビア
- 振動を伝えにくい素材(厚い金属・コンクリートなど)では音量が出にくい
- 充電方式がマイクロUSBなので、将来的には USB-C などの採用を期待したい
- 常設貼付使用では固定方法や耐久性を考慮する必要あり
こんな使い方が向く人
- インテリア系ガジェットが好きで、音の出る“遊び道具”が欲しい人
- 新しい音体験を探求したいオーディオ好き
- 部屋の中で家具・壁・窓を活かして音響空間を作ってみたい人
- 外出先などでスピーカーを持ち歩くより、「その場のモノを使って鳴らす」手法を楽しみたい人