ガソリンエンジン・ロータリーエンジン・ディーゼルエンジンの違い

今回は、「内燃機関の主要特性」ガソリン(レシプロ)エンジン、ロータリーエンジン、ディーゼルエンジンの特性を詳細に比較・解説する。

燃料方式から熱効率、排出物質、用途に至るまで幅広く検討し、現代における各エンジンの意義を明確にしよう!

燃料と点火方式の違い

ガソリンエンジンの燃料と点火方式

ガソリンエンジンはガソリンを燃料とし、火花点火によって燃焼を開始する。燃焼方式は予混合燃焼であり、燃料と空気を事前に混合して燃焼室に送り込む点が特徴である。

ロータリーエンジンの燃料と点火方式

ロータリーエンジンもガソリンを用い、火花点火により燃焼を行う。基本原理はガソリンエンジンと同様だが、燃焼室の形状が異なるため燃焼特性に差異が生じる。

ディーゼルエンジンの燃料と点火方式

ディーゼルエンジンは軽油を燃料とし、圧縮点火によって燃焼が始まる。燃焼方式は拡散燃焼であり、燃料を直接噴射し、燃焼室内で空気と混合しながら燃焼が進行する。

それぞれの特徴早見表

項目ガソリン(レシプロ)エンジンロータリーエンジンディーゼルエンジン
燃料ガソリンガソリン軽油
点火方式火花点火火花点火圧縮点火
燃焼方式(注)予混合燃焼予混合燃焼拡散燃焼
負荷制御方式吸入空気量制御吸入空気量制御燃料噴射量制御
圧縮比9〜131017〜23
出力中・高速型高速型低・中速型
熱効率25〜35%レシプロより劣る35〜50%
筒内最高圧力7〜9 MPa同左8〜15 MPa
排出物質CO₂多いHC多い、NOₓ少ないNOₓ多い、PM多い、CO₂少ない
振動・騒音低い最も低い高い
低温始動性良好同左劣る
耐久性良好燃焼ガス気密性難良好
寸法大型化不可能軽量・コンパクト大型化可能
主要用途乗用車、小型トラックスポーツカー乗用車、トラック、バス

  • 予混合燃焼:燃料と空気をあらかじめ混合させ、その混合気を燃焼室へ送り込み点火させる方式
  • 拡散燃焼:燃焼室内に燃料を噴射し、空気と混合・拡散させながら燃焼させる方式

燃焼と負荷制御の方式

ガソリン・ロータリーエンジンの負荷制御

ガソリンエンジンおよびロータリーエンジンは、ともに吸入空気量を制御することで負荷を調整する。スロットルバルブを用いた方式が典型である。

ディーゼルエンジンの負荷制御

ディーゼルエンジンでは燃料噴射量の制御によって負荷を調整する。空気は基本的に全開で吸入されるため、ガソリンエンジンとは制御の概念が異なる。

圧縮比と出力特性

圧縮比の比較

  • ガソリンエンジン:9〜13
  • ロータリーエンジン:10
  • ディーゼルエンジン:17〜23

ディーゼルエンジンは極めて高い圧縮比を持ち、そのため高効率かつ高トルクを発揮する。

出力の傾向

ガソリンエンジンは中・高速域に適し、ロータリーエンジンは高速型の特性を示す。ディーゼルエンジンは低・中速域に強みを持ち、トラックやバスなどの重量車両に適している。

熱効率とシリンダ内最高圧力

熱効率

  • ガソリンエンジン:25〜35%
  • ロータリーエンジン:ガソリンエンジンより劣る
  • ディーゼルエンジン:35〜50%

ディーゼルエンジンは高圧縮比により、他方式よりも高い熱効率を実現する。

シリンダ内最高圧力

  • ガソリンエンジン:7〜9 MPa
  • ロータリーエンジン:同程度
  • ディーゼルエンジン:8〜15 MPa

ディーゼルエンジンは高い圧力環境下で運転されるため、耐久性が求められる。

排出物質の特性

  • ガソリンエンジン:CO₂排出量が多い
  • ロータリーエンジン:HC(未燃焼炭化水素)が多いが、NOₓは少ない
  • ディーゼルエンジン:NOₓやPM(粒子状物質)が多いが、CO₂は少ない

この違いは環境負荷に大きな影響を与えるため、規制や技術革新と密接に関連する。

振動・騒音と始動性

  • ガソリンエンジン:振動・騒音が低い、低温始動性は良好
  • ロータリーエンジン:最も低振動、低温始動性も同等
  • ディーゼルエンジン:振動・騒音が大きく、低温始動性は劣る

快適性という観点ではガソリンやロータリーが優れている。

耐久性と寸法の制約

  • ガソリンエンジン:耐久性は良好、大型化は不可能
  • ロータリーエンジン:燃焼ガスの気密性維持が課題、軽量・コンパクト
  • ディーゼルエンジン:耐久性は良好、大型化が可能

産業用機械や大型車両にディーゼルが多用される理由はここにある。

主な用途と適合分野

  • ガソリンエンジン:乗用車、小型トラック
  • ロータリーエンジン:スポーツカー
  • ディーゼルエンジン:乗用車、トラック、バス

それぞれの特性に応じて適切な分野で採用されている。


以上の比較から、ガソリン、ロータリー、ディーゼルの各エンジンは、燃料特性や燃焼方式、効率や排出物質において顕著な違いを有している。

自動車産業においては、これらの特性を理解し、用途や環境基準に応じて最適なエンジンを選定することが極めて重要!