有機

1. LEDの基本原理

1.1 LEDとは何か

発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)は、半導体のp-n接合に順電圧を加えた際、自由電子と正孔(ホール)が再結合することで発光する素子である。LEDは以下のような特性を持つ。

  • 高い電気-光エネルギー変換効率
  • 長寿命(約5万時間)
  • 高輝度
  • 高いON/OFF応答性
  • 低消費電力
  • ナノ秒単位での高速スイッチングが可能
  • 環境負荷が少ない

特に、環境負荷が少なく高効率である点から、白熱電球や蛍光灯に代わる次世代の光源として注目されている。

1.2 LEDの発光メカニズム

LEDはp型半導体とn型半導体の接合部であるp-n接合を利用して光を発生させる。

  1. 順電圧を加えない状態
    • 自由電子(n型)と正孔(p型)はそれぞれの領域にとどまる。
    • フェルミレベル(Eₓ)は異なる状態にあり、電子は拡散せず発光は起こらない。

  1. 順電圧を加えた状態
    • 接合部の障壁(拡散電位Vₓ)が低下し、電子がp型側へ、正孔がn型側へ拡散する。
    • 接合部で自由電子と正孔が再結合すると、その余剰エネルギーが光として放出される。
    • これがLEDの基本的な発光原理である。


2. LEDの材料と特性

2.1 直接遷移型半導体と間接遷移型半導体

LEDには直接遷移型半導体間接遷移型半導体がある。

  • 直接遷移型半導体(高発光効率)
    • 電子が価電子帯の正孔と再結合する際に、運動量の変化が不要であり、高い発光効率を持つ。
    • 例: GaAs, GaN, InP, AlN など
  • 間接遷移型半導体(低発光効率)
    • 電子が価電子帯の正孔と再結合する際に、運動量の変化が必要なため発光効率が低い。
    • 例: Si(ダイヤモンド構造), SiC, GaP など

LEDの発光には高効率な直接遷移型半導体が用いられる。

2.2 バンドギャップと発光波長

LEDの発光波長(λ)は、**半導体の禁制帯幅(E₉: バンドギャップエネルギー)**によって決まる。

(h: プランク定数, c: 光速, λ: 波長)

  • GaAs(1.42 eV)→ 赤外線
  • AlGaAs(1.9 eV)→ 赤色
  • GaN(3.4 eV)→ 紫外線
  • InGaN(可視領域の光:365 nm - 1.9 μm)

このように、使用する半導体材料によってLEDの発光色が決まる。


3. LEDの構造と発光効率

3.1 LEDの構造

LEDのp-n接合には主に以下の3つの構造がある。

  1. ホモ接合型
    • p型とn型が同じ半導体材料で構成される。
    • 例: GaAs LED
  2. ダブルヘテロ接合(DH)
    • 異なる禁制帯幅を持つ半導体を利用し、発光効率を向上させる。
    • 例: AlGaAs/GaAs LED
  3. 量子井戸構造
    • バンドギャップの小さい層に電子や正孔を閉じ込めることで、高効率な発光を実現。
    • 例: GaN/InGaN LED

3.2 LEDの発光効率

LEDの発光効率を示す指標として、**外部量子効率(ηₑₓₜ)**が用いられる。

(P: LEDの光パワー, I: LEDに流れる電流, Vₑ: 素子電圧)

LEDの発光効率は半導体材料の禁制帯幅に依存し、特定の組成に調整することで高効率化が可能である。


4. 最新のLED技術と応用

高効率LED技術

  • 深紫外LED(波長250 nm): AlGaN系材料を用いた次世代消毒・殺菌用LED
  • 青色LED(波長444 nm): GaN/InGaN系で開発され、約85%の外部量子効率を達成
  • 白色LED: 青色LED+蛍光体の組み合わせによる発光

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