高分子と低分子の溶液には、構造や挙動において大きな違いが存在する。この違いは、溶液中での分子同士の絡み合いや分子量に起因し、さまざまな物理的な現象として現れる。
本記事では、高分子溶液特有の現象である「ワイゼンベルグ効果」「溶液圧力の違い」「流動現象」について詳しく解説する。
高分子溶液とは
高分子溶液は、一般的な低分子の溶液と異なり、巨大な分子(高分子)が溶媒中に分散した状態の溶液である。
高分子は分子量が非常に大きく、長鎖構造を持つため、溶液中で絡み合いや配向が起こりやすい。このような構造的特徴が、溶液の粘性や流動特性に顕著に影響を与える。
溶液の性質の違いまとめ
ワイゼンベルグ効果:高分子溶液の回転現象
ワイゼンベルグ効果とは
高分子溶液において観察される「ワイゼンベルグ効果」は、回転する物体の周囲で液体が上昇する現象である。
例えば、ガラス棒を高分子溶液中で回転させると、液体が棒に巻きつくようにして上昇する。この現象は、高分子溶液特有の挙動であり、低分子溶液では観察されない。
低分子溶液の挙動との違い
砂糖水などの低分子溶液では、ガラス棒を回転させると、棒の周囲に渦が発生し、液面が中心に向かって下がる。
これは遠心力により、液体が外側に押し出されるためである。低分子は絡み合うことがないため、このように単純な流れが生じる。
高分子溶液における巻き上げ現象のメカニズム
一方で高分子溶液では、長鎖の高分子が絡み合っているため、回転によって発生する引き伸ばし力が分子鎖に伝わり、分子が棒に向かって巻き上げられる。これがワイゼンベルグ効果である。
この効果は、特に粘度が高い高分子溶液や高分子の分子量が大きい場合に顕著である。
溶液圧力の違い:細管からの流出現象
水と高分子溶液の流れの違い
水道水などの低分子溶液では、細い管から放出されると、液体の太さは管よりも細くなる。しかし、高分子の濃厚溶液を管から放出すると、逆に液体の太さが一瞬太くなる現象が観察される。
高分子溶液で発生する膨張の原因
この膨張は、高分子同士の絡まりによって圧力が蓄積されるためである。
細い管の中を通る際に圧縮されていた高分子鎖が、管から出ると束縛が解放され、広がることで膨張が生じる。これにより、高分子溶液は一度太くなってから再び細くなる。
粘弾性の影響
高分子溶液は、弾性(伸び縮みの性質)と粘性(流動性の抵抗)の両方を持つ「粘弾性」を示す。
この粘弾性が、溶液が細管から出た際に膨張する原因であり、高分子の絡み合いが解放される際に一時的な膨張を引き起こす。
流動現象:サイホンのような高分子溶液の流れ
通常の低分子溶液の流れ
低分子溶液の場合、ビーカーを傾けると重力に従って流れ出し、ビーカーが元に戻されれば流れも途絶える。
分子の独立性が強く、他の分子に影響を及ぼさないため、このような単純な流れが見られる。
高分子溶液がビーカーの壁を伝う理由
高分子溶液の場合、ビーカーを元に戻しても、溶液は途切れることなく、ビーカーの壁面を伝いながら流れ続ける。
この現象は、絡み合った高分子鎖同士が互いに引っ張り合い、流れが継続するためである。高分子の濃厚溶液は一度流れが始まると、サイホンのように自発的に流れる傾向を示す。
分子の絡み合いによる粘性
この流れの継続は、高分子の「絡まり」が原因である。高分子鎖が他の鎖を引き上げながら流れることで、流れが途切れずに連続する。
このため、高分子溶液は、一般の液体とは異なる「粘性の高い流れ」を示す。
高分子溶液の特性を理解するための練習問題
問題1:ワイゼンベルグ効果について
ガラス棒を回転させたとき、高分子溶液が棒に巻きつく理由を説明せよ。
解説と解答
高分子溶液では、分子鎖が絡み合っているため、回転によって引き伸ばし力が分子鎖に伝わり、分子が棒に巻き上げられる。これがワイゼンベルグ効果である。
問題2:溶液圧力の膨張現象
高分子溶液が細管から出るときに膨張する理由を説明せよ。
解説と解答
高分子溶液では、細管内で分子同士が絡み合い圧力が蓄積されているため、細管から出た瞬間に束縛が解放され、膨張する現象が発生する。
問題3:高分子溶液の流れの継続性
高分子溶液がビーカーの壁面を伝って連続的に流れる理由を述べよ。
解説と解答
高分子鎖が絡み合い、一度流れが始まると他の分子を引き上げる力が働くため、流れが途切れることなく続く。これにより、高分子溶液はサイホンのように自発的に連続的に流れる。