ボース・アインシュタイン凝縮体を通過する光の速度

ボース・アインシュタイン凝縮体は、極低温状態で現れる量子物理学の驚異的な現象であり、光の速度を劇的に減速させたり、完全に停止させたりすることが可能である。

ボース・アインシュタイン凝縮体とは?

ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)は、極低温状態で現れる量子力学的な現象である。1924年にアルベルト・アインシュタインとインドの物理学者サティエンドラ・ボースによって理論的に予測された。

絶対零度(約−273.15℃)に近い温度まで冷却されたボース粒子(整数スピンを持つ粒子)は、同じ量子状態に占有され、波動関数が重なり合うことで、マクロなスケールで量子力学的な振る舞いを示す。この現象がBECである。

光速度の上限と下限

通常、光速は真空中で約299,792,458 m/s(約3億 m/s)である。しかし、光速度には上限があるものの、下限は存在しない。すなわち、特定の媒質を通過する際、光は大幅に減速することがあり、極端な場合には完全に停止させることも可能である。

BECを利用した光の減速実験

1999年、米国マサチューセッツ州のハーバード大学とスウェーデンのルンド大学の研究者らは、ナトリウム原子のBECを用いた実験で、光の速度を大幅に低下させることに成功した。

実験の概要

BECはナノケルビン(約**−273.149999℃)という極低温に冷却された状態で形成される。このBEC内にレーザー光を通過させたところ、光の速度は通常の真空中の約3億 m/sから17 m/s**(時速約60 km)まで低下した。この減速率は2000万分の1に相当する。

さらに2年後の2001年、BECを用いた実験では光を完全に停止させることにも成功した。具体的には、光パルスをBEC内に送り込み、その情報を保持した後、別のレーザーパルスを照射することで光を再び取り出すことができた。

BECの応用可能性

BECを利用した光の減速・停止技術には、以下のような応用が期待されている。

1. 光通信のデータストレージ

光信号を一時的に停止し、必要なタイミングで取り出すことで、高度な光通信ネットワークの構築が可能になる。

2. 量子コンピューターへの応用

光の情報を保持する特性を活用し、量子メモリや量子演算の基盤技術として利用できる可能性がある。

3. 光の波長制御による高精度センサー

光の速度を極端に低下させることで、光波長の変化を精密に測定し、超高感度のセンサー技術に応用することが考えられている。

まとめ

ボース・アインシュタイン凝縮体は、極低温状態で現れる量子物理学の驚異的な現象であり、光の速度を劇的に減速させたり、完全に停止させたりすることが可能である。1999年の実験では光速を17 m/sまで低下させ、2001年には光を一時的に停止させることに成功した。この技術は光通信や量子コンピューターの発展に大きく貢献すると期待されている。


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