
1. オレフィンの光励起状態の性質
オレフィンのC=C二重結合は光励起によって電子的な変化を受け、励起状態に移行する。この励起状態には、**一重項励起状態(S₁)と三重項励起状態(T₁)**が存在し、それぞれ異なる反応経路を示す。
- 一重項状態(S₁):短寿命であり、主に蛍光発光や内部転換によって基底状態へ戻る。
- 三重項状態(T₁):ラジカル的性質を持ち、比較的長寿命でさまざまな反応を引き起こす。
このような励起状態を経て、オレフィンは光学異性化や付加反応などの光化学的転化を示す。
2. E-Z異性化のメカニズム
オレフィンは光励起によりE体とZ体の異性化を起こすことが知られている。例えば、E-スチルベンを光照射するとZ-スチルベンへと異性化する。この異性化は以下の過程を含む。
- **基底状態(S₀)**ではE体が最安定状態にある。
- 光励起によりS₁またはT₁へ遷移する。
- T₁状態での回転:T₁状態ではC=C結合が回転可能となり、E体がZ体へ変化する。
- 再配位:T₁から基底状態へ戻る際に、新たな異性体としてZ体が形成される。
このE-Z異性化は、視覚認識におけるロドプシンの光異性化反応にも関与しており、生物学的にも重要なプロセスである。


3. プロトン移動に伴う極性付加反応
オレフィンはラジカル的な特性を持つため、プロトン移動に伴う極性付加反応を引き起こすことがある。例えば、分子内プロトン移動によって以下のような転位が生じる。
- 1,3-移動による骨格転位
- Rydberg準位経由の極性付加反応
- マルコフニコフ則に従う水素付加
特に、Rydberg状態ではカルボカチオンが形成されやすく、極性付加が促進される。例えば、レフレクチンオキシドはこのメカニズムにより高い選択性を示す。

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