
はじめに
高分子の物性評価において、分子量の測定は中心的な位置を占めている。特に、粘度法を用いた分子量評価は、溶液状態における高分子の挙動を理解する上で極めて重要である。
本記事では、高分子希薄溶液の粘度測定に基づく「粘度平均分子量」について、式の導出や意味を丁寧に解説する。
粘度測定による分子量評価の基本原理
高分子溶液の粘性挙動と極限粘度数
希薄溶液中の粘度上昇
高分子希薄溶液の粘度測定では、無限希釈状態の粘性率の増分である極限粘度数 [η]を求めることができる。極限粘度数とは、濃度が0に近づいたときの特性粘度であり、溶媒と高分子間の相互作用を反映する物理量である。
極限粘度数と分子量の関係式
極限粘度数 [η]は、分子量 M との間に以下のような経験則に基づく指数関係があるとされる。
[式1]

ここで、
- K:溶媒と高分子の組合せに依存する比例定数
- ν:指数(溶媒と高分子の組合せにより決定)
式[式1]は、分子量分布のない単一分子量系で成り立つ経験式である。
分子量分布を考慮した粘度平均分子量の導出
分布のある試料に対する補正式
粘度平均分子量の定義式
実際の高分子試料には分子量分布が存在することが一般的である。このような場合、式[式1]はそのまま適用できず、分布を考慮した修正が必要となる。以下に示すのが、粘度平均分子量 MvM_vMv の定義式である。
[式2]

ここで、
- Ni:分子量 MiM_iMi を持つ分子の個数
- ν:式[式1]と同様の指数
- Mv:粘度平均分子量
式[式2]は、各分子種の寄与を適切に加味した平均分子量であり、分布の影響を反映した正確な評価が可能となる。
νの特殊値と他の平均分子量との関係
特に ν=1の場合、式[式2]は以下のように簡略化される:
[式3]

この式[式3]は、重量平均分子量(Mw)の定義と一致するため、ν=1 のときには Mv=Mw が成立する。
粘度法による分子量推定の実用性
経験定数 K および ν の役割
式[式1]の定数 K および ν は、溶媒と高分子の組合せに依存する固有値であり、予め既知である場合には、粘度測定から直接的に Mv を算出できる。
粘度法の応用と利便性
分子量未知の試料であっても、極限粘度数 [η] を測定すれば、式[式1]および[式2]により比較的簡便に Mv を評価できる。
このため、粘度法は分子量決定手法として広く利用されており、高分子希薄溶液の性質解析において非常に有効である。
まとめ
粘度平均分子量 Mv の評価は、高分子物性の理解に欠かせない指標である。極限粘度数と分子量との関係に基づくこの手法は、溶媒との相互作用を含めた詳細な情報を提供する。
特に分子量分布を持つ実試料に対しても対応可能であり、定量性と再現性に優れた方法であるといえる。
