ハーゲン・ポアズイユの式について「高分子溶液の粘度・拡散」

高分子溶液の拡散特性と粘度に関する基本概念

高分子溶液は、低分子溶液と比較して粘度が高く、拡散が遅いという特性を持つ。この拡散の遅さは「拡散係数」D によって定量的に表されるが、その高粘性の起源は「固有粘度」[η]によって理解される。

高分子の拡散性は、希薄溶液中における粘度の増加量を指標とすることで、その分子構造や運動性の評価が可能となる。

固有粘度[η]は、次の式により定義される。

ここで、ηは高分子溶液の粘度、ηₛは低分子溶媒の粘度、cは高分子の質量濃度を示す。

この固有粘度は、高分子鎖の分子量M、回転半径√⟨S2⟩​、および流体力学的半径Rh​と密接に関連する。


拡散係数と分子構造の関係式

高分子の拡散係数Dと固有粘度[η]は、以下のように表される。

ここで、ΦおよびTは形状係数と絶対温度、kB​はボルツマン定数である。

Φは高分子の形状に依存するが分子量には依らず、これらの式により、分子構造や拡がり、さらには高分子の拡散特性の定量化が可能となる。


高分子溶液の拡散実験とその解析

高分子溶液の拡散性は、実験的にも極めて重要な課題である。図1に示すように、水槽の底部に細長い管を接続し、そこから高分子水溶液を排出する設定を用いる。

↓図1

このとき、水槽内に均一な高分子濃度を持つ溶液を保持し、水を加えた瞬間から分子の拡散挙動が観察される。


濃度分布の時間変化とその数学的モデル

水を加えた瞬間をt=0とし、水槽内の高分子濃度分布 c(x,t) を図2に示す。

↓図2(手書きの適当な図です)※イメージ

初期の水深をx0、初期濃度をc0​とすると、拡散係数Dの単位はm2 s−1である。図2から明らかなように、下層 (x/x0<1)では時間の経過とともに濃度が減少し、上層では増加することが分かる。

これは拡散が進行することにより、濃度勾配が緩和されていく様子を示している。


ハーゲン・ポアズイユの式による排水時間の定式化

図1の装置において管の先端の栓を抜くと、高分子水溶液は管を通じて重力により排出される。

この排出に要する時間tfは、次のハーゲン・ポアズイユの式によって評価される。

ここで、各変数の意味は以下の通りである:

  • η:溶液の粘度
  • L:管の長さ
  • a:管の半径
  • ΔP:溶液表面と管の下端との間の圧力差
  • V:排出すべき溶液の体積

この式は、液体が粘性流体として管を通じて流出する際の圧力損失と流量の関係を記述するものである。

高分子溶液の粘度が高いほど、また管の半径が小さいほど、排出には長い時間を要する。


まとめと展望

本稿では、高分子溶液の拡散係数および固有粘度の理論的関係に基づき、拡散挙動の解析とその時間発展について詳述した。

高分子の構造情報は、拡散係数や固有粘度といったマクロな物理量から逆算可能であり、さらには排水時間といった実用的な時間スケールの推定にも応用可能である。

↓おすすめの本・グッズ