
音の強さとは何か
通常、耳にする音は空気を媒質として伝わる縦波の波動である。耳の中の鼓膜は、角振動数ωを感じ取ることによって音の高さを知り、波の強さIを感じ取ることで音の強弱を知る。このように、音の知覚には物理的な波動としての性質が密接に関わっている。
デシベルによる音の強さの定義
音の強さを表す単位として「デシベル(dB)」が用いられる。音の強さをIとしたとき、デシベル値Lは次の式で与えられる。

この式によって求められる数値が、その音の強さに対するデシベル値となる。ここでI₀は基準となる音の強さであり、その値はI₀ = 10⁻¹² W/m²と定められている。この基準値は、振動数1 kHzの音波を人間がかろうじて聞き取れるもっとも弱い音の強さに相当する。
基準音強度とその物理的意味
I₀ = 10⁻¹² W/m²という基準値は、人間の耳が1 kHzの純音を聴取できる最小の音圧レベルを物理的に定義したものである。この基準があることで、異なる音の強さを共通の尺度で比較することが可能となる。
音の振動数と音の強さの関係
デシベル値が同じであっても、音の振動数(音の高さ)や音色(振動数分布、つまり複数の振動数の組み合わせ)によって、耳に感じる強さは異なる。例えば、同じデシベル値の音であっても楽器の種類によって人間の感じる大きさが異なるのはこのためである。
人間の聴覚と音の強さの知覚
人間の耳が音の強さをどのように感じるかは、単に物理的な強度だけでなく、周波数の感度特性に依存する。耳に感じる強さを1 kHzの音の強さに換算して比較する手法が採られており、この換算値を用いることで異なる振動数の音の強さを比較できる。
音の強さを「フォン」で表す理由
このように耳に感じる強さを1 kHzの音に換算したときのデシベル値を特に「フォン(phon)」と呼ぶ。0 phonは人間がかろうじて聞き取れる最も弱い音に相当する。通常の会話の大きさはおおよそ35〜65 phon、地下鉄の音の大きさはおおよそ100 phonとされる。人間の耳が反応できる振動数の範囲は16 Hzから20 kHzまでである。
日常生活における音の強さの目安
このような指標により、日常生活の中で遭遇する音の強さを数値化し比較できる。例えば、静かな図書館では40 phon程度、繁華街では70 phon程度とされる。
人間の可聴周波数範囲
人間の耳が感知できる振動数範囲は16 Hzから20 kHzの間にあり、これを超える音は通常聴取できない。これがオーディオ機器や音響設計の際の基準となる。
音の強さを決定する数式とその背景
なお、デシベル値を求める音の強さIは、一次元的に進む音波(平面波)で考えることになっている。この場合のIの表式は文中の(56)式で与えられ、空気密度ρおよび音速χを用いる。これらは空気の圧力や温度によって決まる物理量であり、振動数や振幅によって音の強さが変化することがこの式からも理解できる。
空気の物理特性と音の強さ
空気の密度ρや音速χは、周囲の気圧や温度に依存するため、音波の伝播特性にも影響を与える。これらの変数が異なる環境では、同じ音源でも異なる音の強さとして伝わる可能性がある。
音波の進行と平面波の仮定
デシベル計算では平面波として音波を仮定することで理論的な簡略化が行われるが、実際の音波は点音源から球面波として広がる場合が多い。このため、音場の条件によっても実際に感じる音の強さは変化する。
振動数・振幅による音の強さの変化
音の強さは、振動数と振幅に依存しており、同じデシベル値であっても高い周波数ではより小さく、低い周波数ではより大きく感じることがある。このため、音響測定では人間の聴覚特性に合わせた補正が必要となる。
