
水流ポンプ(アスピレーター)の基本原理
水流ポンプ(アスピレーター)は、水を勢いよく流すことによって生じるベンチュリ効果を利用し、負圧を発生させる装置である。この負圧は、ろ過や減圧操作など多様な実験操作に用いられる。
図に示すように、内部の構造は単純で、水流が狭い管を通過する際に流速が増加し、圧力が低下することで空気や気体を引き込む仕組みとなっている。

アスピレーターには、ガラス製のほかに金属製、テフロン製、ポリプロピレン製のものが市販されている。ガラス製は実験室で広く用いられるが、耐久性の観点から金属製や樹脂製が使用される場面も多い。
通常、水道水を用いる場合、毎分15〜16 Lという大量の水を消費する。そのため環境負荷を考慮し、水を循環させて使用できる電動式のアスピレーターも開発されている。
しかしこの場合、長時間の使用により水温が上昇し、真空度が低下するため、冷却水を併用する必要がある。
ただし、吸引した溶媒蒸気が水に溶解し、排水とともに下水に流入するため、環境への悪影響が懸念される。この点から、近年では使用が制限される傾向にある。
アスピレーターの構造と動作原理
ベンチュリ効果の応用
アスピレーターは、流体力学的に以下の原理に基づいている。
流体の流れにおいて、連続の式とベルヌーイの定理を適用すると、

となる。ここで、Pは圧力、ρは流体密度、vは流速、hは高さを表す。水が狭窄部を通過することで流速vが増大し、その結果として圧力Pが低下する。この圧力差が負圧を生み、気体を吸引する。
実際の構造
水流が勢いよく下方へ流れると、側面から空気が引き込まれる構造となっている。ガラス製アスピレーターでは、透明性により内部の流れを観察できるため、教育用としても適している。
使用時の注意事項
アスピレーターは便利である一方、誤用や環境負荷に関するリスクが存在する。
接続時の注意
- 水道の蛇口に接続する際は、厚肉のゴム管を使用し、水圧で外れないように針金で強く固定する必要がある。接続が甘い場合、水漏れや外れによる事故が発生する。
材質の選択
- 酸性ガスを扱う際には、金属製アスピレーターの使用は禁止される。酸による腐食のリスクがあるためである。
溶媒の流出防止
- 低沸点溶媒は容易に揮発し、水道を通じて下水道に流入する。この場合、排水処理施設や環境に負担を与えるため、冷却トラップを併用することが強く推奨される。
逆流防止
- 水圧が低下した場合、逆流が生じることがある。そのため、逆流防止用のトラップを間に設置することが望ましい。
減圧操作時の注意
- 減圧する装置とポンプの間には三方コックを接続しておく必要がある。操作を終える際には、まずコックを開放してからポンプを停止しなければならない。もし減圧状態のままポンプを停止すると、水が逆流する危険がある。
まとめ
アスピレーターは、ベンチュリ効果を利用した単純かつ有用な装置であり、研究や教育の現場で広く用いられてきた。
構造が簡便で低コストである点は利点であるが、大量の水を消費するため環境負荷が大きく、さらに揮発性溶媒の排出や逆流のリスクが存在する。そのため、使用時には材質の選択・冷却トラップの併用・逆流防止策といった注意点を守る必要がある。