廃棄タバコのフィルターを使って吸着剤に!?タバコから環境を守る!

はじめに

水質汚染は世界中で大きな問題となっています。特に、繊維産業から排出される有害な色素を含む廃水は、環境や健康に重大な影響を及ぼします。この研究は、廃棄されたタバコのフィルター(以下、CB)を再利用し、経済的かつ環境に優しい吸着剤として合成し、これを用いて水中の有害な合成染料を除去することを目的としています。

研究の背景

水質汚染の現状

繊維産業から排出される廃水は、合成染料を大量に含んでおり、水中の光合成を妨げ、生物化学的酸素要求量(BOD)や化学的酸素要求量(COD)を増加させることで水生生物の成長を抑制します。これらの染料は食品連鎖に入り込み、毒性や発がん性を引き起こす可能性があります。

吸着技術の利点

様々な水処理技術の中で、吸着法はその簡便さ、高効率、選択性、再利用可能性などの利点から特に注目されています。従来の吸着剤(活性炭、ゼオライト、グラフェンなど)は高価であり、合成が複雑であるため、より経済的で簡便な代替材料が求められています。

廃棄タバコフィルターの再利用

タバコフィルターの特性

廃棄されたタバコのフィルターはセルロースアセテートを主成分とし、自然分解が困難です。また、燃焼時に生成される多くの有害物質を含んでおり、適切な処理が必要です。

研究のアプローチ

この研究では、廃棄されたタバコのフィルターをアルカリ処理(NaOH)し、さらにキトサン(Cs)と組み合わせることで、吸着性能を向上させた吸着剤を作製しました。これにより、カチオン性染料(メチレンブルー(MB)、クリスタルバイオレット(CV))およびアニオン性染料(リアクティブブルー19(RB19))の除去効率を調査しました。

実験結果

吸着性能の評価

NaOH処理されたCB(CB-B)はカチオン性染料に対して高い吸着性能を示し、CB-B/Cs複合材料はアニオン性染料に対して優れた吸着性能を示しました。これらの吸着プロセスは自発的な発熱反応であり、擬一次反応とLangmuir等温モデルに従いました。

最大吸着容量

MB、CV、RB19のそれぞれの最大吸着容量は、89.85、82.41、304.49 mg/gでした。

吸着のメカニズム

吸着の主なメカニズムは、静電引力を伴う物理吸着であり、CBベースの吸着剤は再利用性が高く、4回の再利用後でも75%以上の効率を維持しました。

結論

廃棄されたタバコのフィルターを再利用した吸着剤は、合成染料を含む廃水の処理において非常に有望です。これにより、廃棄物の有効利用が促進され、環境保護に寄与することが期待されます。

論文の引用と著者

Tran, T. K. N., Le, V. T., Nguyen, T. H., Doan, V. D., Vasseghian, Y., & Le, H. S. (2023). Enhanced adsorption of cationic and anionic dyes using cigarette butt-based adsorbents: Insights into mechanism, kinetics, isotherms, and thermodynamics. Korean Journal of Chemical Engineering, 40(7), 1650-1660. DOI: 10.1007/s11814-022-1373-z