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光付加環化とは?
光付加環化(Photocycloaddition)とは、光励起された不飽和結合が基底状態の不飽和結合と付加して環化生成物を形成する反応である。
この反応にはさまざまな種類があり、段階的に協奏的に進行する場合と中間体を経て段階的に進行する場合がある。
本記事では、主に【2+2】付加環化反応や【4+4】付加環化反応を中心に解説する。
Woodward–Hoffmann則と光付加環化
光付加環化反応の特徴の一つは、光励起による軌道相互作用が支配的である点にある。一般に、熱反応では対面型遷移状態が優勢となるが、光反応では交差型遷移状態が選択的に進行する。
Woodward–Hoffmann則に基づき、分子軌道の対称性が許容する範囲で光付加環化が進行する。
代表的な光付加環化反応
【2+2】付加環化反応
【2+2】付加環化反応は、二重結合を有する分子が光励起され、別の二重結合と反応して四員環を形成する反応である。
典型的な例として、電子供与体と電子受容体の組み合わせによるエキシプレックス形成を伴う付加環化が挙げられる。例えば、アントラセンとオレフィンの【2+2】光付加環化反応では、高い量子収率(φ = 0.027)を示す。
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【4+4】付加環化反応
【4+4】付加環化反応は、共役二重結合を有する分子同士が光照射により結合し、八員環構造を形成する反応である。アントラセンの二量化はその代表例であり、エキシプレックスを経由することが知られている。
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芳香族炭化水素の光付加環化
芳香族炭化水素(アレーン)がアルケンと反応すると、付加環化反応が進行する。この場合、1,2-付加環化(【2+2】)や1,4-付加環化(【4+4】)など、複数の生成物が得られる。これらの反応は、軌道対称性やアルケンの電子的性質に大きく依存する。
ケトンやアルデヒドを含む光付加環化
ケトンやアルデヒドがアルケンと光付加環化を起こすと、酸素原子を含むヘテロ環が形成される。この反応はPaternò–Büchi反応と呼ばれ、【2+2】付加環化の一種である。
この反応では、励起状態のカルボニル基がアルケンに対してラジカル的求核付加を起こし、最終的に四員環構造を形成する。
特に、ベンズアルデヒドと2-メチル-2-ブテンの反応では、量子収率が0.45と比較的高い。
まとめ
光付加環化反応は、分子の光励起による特異的な電子状態を利用して進行する環化反応である。
特に、【2+2】付加環化や【4+4】付加環化は、エキシプレックス形成や分子軌道の対称性に依存する。
さらに、Paternò–Büchi反応など、ケトンやアルデヒドを含む光付加環化は有機合成において重要な役割を果たす。
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