水の融解潜熱について(334 kJ/kg)

融解潜熱の概念を理解すれば、さまざまな熱エネルギーの計算が可能になる。

1. 融解潜熱の基本概念

水の融解潜熱とは、0℃の氷が水へと変化する際に吸収する熱エネルギー、あるいは水が氷へと凍る際に放出する熱エネルギーのことを指す。

具体的には、1 kg の氷が0℃で水に変化する際、334 kJ(キロジュール)のエネルギーを吸収する。逆に、1 kg の水が0℃で氷に変化する際には、同じ334 kJのエネルギーが放出される。このエネルギーを「融解潜熱」または「凝固潜熱」と呼ぶ。

2. 潜熱とは?— 温度変化を伴わない熱エネルギー

潜熱(latent heat)とは、物質の状態(相)が変化するときに関与する熱エネルギーのことであり、温度変化を伴わないという特徴がある。通常、熱エネルギーを加えれば温度は上昇し、逆にエネルギーを失えば温度は下がると考えがちだ。しかし、融解や凝固などの相変化の過程では、熱エネルギーは吸収または放出されるものの、温度は一定に保たれる。この現象が潜熱の本質である。

3. ジョゼフ・ブラックの発見と潜熱の概念

スコットランドの医師であり化学者でもあったジョゼフ・ブラック(Joseph Black, 1728-1799)は、潜熱の概念を初めて明確にした人物である。彼は次のような実験を行った:

  • 0℃の氷に熱を加えてもすぐに温度が上昇するのではなく、氷が溶けて水になるまで0℃のままであることを観察した。
  • さらに、氷のかたまりを熱湯に入れると、温度を上げずに熱湯の熱が氷に吸収されることを確認した。

この結果から、物質が相変化を起こす際に温度変化を伴わない熱エネルギーの存在を示し、それを「潜熱」と名付けた。

4. 水の融解潜熱と他の潜熱の比較

水の融解潜熱(334 kJ/kg)は、他の物質と比較すると比較的高い値を示す。例えば:

物質融解潜熱(kJ/kg)
水(氷 → 水)334
25
272
アルミニウム396

さらに、水が液体から気体へと変化する際の気化潜熱2260 kJ/kg と、融解潜熱よりもはるかに大きい。このため、蒸発は氷の融解よりもはるかに多くのエネルギーを必要とする。

5. 日常生活や自然界における応用

水の融解潜熱は、自然現象や工学的応用において重要な役割を果たす。

  • 冬季の気候調整:雪や氷が溶ける際に大量の熱を吸収するため、気温の急激な上昇を防ぐ。
  • 食品の冷却技術:氷を用いた冷却では、氷が溶ける際の潜熱を利用して効率的に温度を維持する。
  • 地球の気候調節:極地の氷が溶けることによって、地球の温度が急激に変動するのを防ぐ役割がある。

練習問題と解答

問題1:
1 kg の氷が0℃で水に変化する際、必要なエネルギーは何 kJ か?

問題2:
500 g の氷を溶かすために必要な熱量は何 kJ か?

問題3:
1 kg の水を0℃で氷に変化させる場合、放出されるエネルギーは何 kJ か?


解答と解説

解答1:
334 kJ(1 kg の氷が水に変わる際の融解潜熱)

解答2:
500 g = 0.5 kg なので、
エネルギー = 334 kJ/kg × 0.5 kg = 167 kJ

解答3:
凝固時の放出エネルギーは融解時と同じなので、334 kJ が放出される。


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