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化学発光(Chemiluminescence)や蓄光(Delayed Light Emission)は、暗闇で光を放つ現象として広く研究されている。特に、化学反応による発光は、生命現象や分析化学において重要な役割を果たしている。本記事では、化学発光の基本原理と代表的な化合物、さらにはその応用について詳しく解説する。

化学発光とは?—発光のメカニズム

化学発光の基本原理

化学発光とは、化学反応によって分子が励起され、その励起状態から基底状態に戻る際に光を放つ現象である。通常の化学反応では、基底状態から分子が励起されることはほとんどない。しかし、特定の化学反応では、分子が励起状態に到達し、そのエネルギーを光として放出することがある。これが化学発光の基本的な仕組みである。

代表的な化学発光の例:ルミノール反応

最も有名な化学発光の一例としてルミノール反応が挙げられる(図)。ルミノール(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン)は、酸化剤と反応すると青色の光を発する。この反応は、血液の検出や化学分析に応用されており、特に犯罪捜査で血痕の確認に利用されることが多い。

ルミノール反応では、以下のようなプロセスが進行する:

  1. ルミノールが酸化剤(例:過酸化水素)と反応し、励起状態の中間体を生成。
  2. この励起状態の中間体が基底状態に戻る際に光子(hν)を放出。
  3. 結果として青色の化学発光が観察される。

また、ルミノールと同様に強い化学発光を示す物質としてシクロヘキサンジオン、N-メチル-9,10-ビス(フェニルエチル)アントラセン塩などが知られている。

遅延発光(蓄光)の仕組み

蓄光とは、物質が一度光エネルギーを吸収した後、徐々にエネルギーを放出して発光する現象である。この現象は燐光(りんこう)や残光とも呼ばれ、蛍光とは異なり、光源が取り除かれた後も一定時間光を放ち続ける。

代表的な蓄光材料には、ストロンチウムアルミネート硫化亜鉛がある。これらの物質は、紫外線や可視光を吸収し、電子を高エネルギー状態に励起させる。その後、電子がゆっくりと基底状態に戻ることで、持続的な発光が可能となる。

過シュウ酸エステル化学発光とその応用

過シュウ酸エステル化学発光は、化学発光の一種であり、過シュウ酸エステルが酸化剤(例えば過酸化水素)と反応することで発光する(図)。この反応では、エネルギーが蛍光色素に転送され、強い発光が生じる。

代表的な発光物質と発光色

過シュウ酸エステル化学発光では、蛍光色素によって発光の色が決まる(表1)。

蛍光物質発光色
9,10-ジシアノアントラセン青緑
9,10-ビス(フェニルエチル)アントラセン
テトラフェニルアントラセン黄緑
1,4-ジ(フェニルエチル)ナフタレン
ローダミンB

この現象は、**ケミカルライト(化学発光スティック)**や化学分析、さらには生体発光の研究などに利用されている。

まとめ

化学発光や蓄光は、単なる発光現象ではなく、生物学、医療、犯罪捜査、化学分析など、さまざまな分野で応用されている。特にルミノール反応は、血液検出や犯罪捜査に不可欠な技術であり、過シュウ酸エステル化学発光は化学発光スティックとして身近な存在となっている。

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