
中性子散乱が可能にする分子構造の可視化
高分子研究における中性子の利点
中性子を用いた物性研究を高分子に適用したとき、最大の利点は分子集合体内の1個の分子の姿がみられることである。もちろんこれには同位体ラベルが必要であった(図)。

そして、このことをイメージで捉えるためによく高分子鎖がからみあった状態を「うどん」にたとえることは話がある。
中性子散乱法による高分子構造の可視化メカニズム
中性子散乱法は、材料中に含まれる原子や分子に中性子ビームを照射し、散乱された中性子の角度と強度を解析することで、原子・分子レベルの構造情報を得る技術である。
特に高分子材料においては、構造が不規則かつ複雑であるため、X線よりも軽元素への感度が高く、かつ深部まで透過できる中性子の特性が有効に機能する。中性子は水素および重水素に対して散乱長が大きく異なるため、重水素ラベルを導入することで特定の高分子鎖を際立たせ、集合体中での1分子の位置や挙動を詳細に解析することが可能となる。
このような手法により、従来は「平均構造」としてしか捉えられなかった高分子の個別性やラベル分子の空間配置まで明らかにすることができる。
「うどん」比喩の限界と「ひやむぎ」の提案
視覚比喩としての適切性の再検討
しかし「うどん」では標識鎖のイメージがいま一つである。むしろ「ひやむぎ」がよい。理由は二つある。
ひやむぎはうどんに比べて太さに対して長さがあり、どの部分をとっても均一にみえることが一つである。
標識鎖の視覚的表現としての有効性
もう一つは標識鎖の存在である。近頃あまりみかけなくなったので、若年層にはひょっとすると知らない人もいるかもしれないが、ひやむぎには長さも味も白いものと変わらないけど、色がついている「分子」が少量混入したものがある。
これが実に標識鎖であって、中性子散乱にとって「重水素ラベル分子」とよく似ている。
着色ひやむぎと標識分子の関係性
色付き成分の比喩的意味
しかし、相違点もあるので蛇足ながら付け加えておく。ひやむぎの着色分子には同じ味のなかに違う色のものがあるが、白いものに対して着色したものは1種類でなければならない、さらに、だいじなことは着色分子の割合はわずかである必要はなく、任意の割合でよい。
